2013年08月21日

男性の自殺 (1) ・・・ はじめに

遠い昔、私にも、自殺に近づいたことがあった。
しかしあれから月日は流れ、忌まわしい記憶は薄れて、
表情は、あの頃より柔和になった。
しかし過去が完全に消えたわけではなく、
時として、真上からあたる光の下で、
あの頃の陰影が表情に現れて、
暗い世界への入り口を見せたりする。

自殺を考えたことがあるかと人に聞けば、
誰もがあると、答えるのかもしれない。
しかし、自殺を考えることと実行することの間には、
遙か遠い距離があると、
あの頃の私は思うようになっていた。
もしも人が、その遠い道をたどれば、
やがて、断崖から身を投じようとする人の姿が見える。

自殺に向かう人は、
その道を歩いて断崖にたどり着き、深い淵に身を投げる。
それは、男性でも女性でも同じことだ。
だから私が、女性の自殺を取り上げなかったとしても、
自殺に向かった女性の苦しみを、軽視しているわけではない。

しかし自殺者に男性が多いことは、
変わることのなかった厳然たる事実であって、
その日本の社会にあって、
男性の「いのち」が、守られることを願い、
私は、男性の自殺の問題を、このブログで取り上げたいと思う。

自殺者の男女比が、もしも逆であったなら、
日本中が大騒ぎになっているような気もする。
女性団体はたぶん、その現実を放置しないだろう。
保護を求める女性たち、保護を受け入れられる女性たち、
しかし保護を求めることができずに、
「男性」であることを背負いながら、
孤独のうちに死んでいく男たちがいる。

男性の自殺がマスコミで取り上げられなかったわけではないし、
男女共同参画分野別予算の第3分野にも、
形式的でしかないとは思うが「自殺対策強化月間広報啓発経費」の記載はある。
しかし、社会に拡大する女性優遇や、
「男女共同参画」と表現しつつも、明らかに女性に偏る配慮の施策の中で
男性の自殺は、それが「死」の問題であるにも関わらず、
取り上げられ方が、あまりにも弱い。   

「男性」あることを背負いながら、
孤独のうちに、死んでいく男たち、
彼らの苦しみに、私たちは、もっと目を向けなければならない。


posted by 翠流 at 19:36| Comment(4) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月06日

男性の自殺(2)・・・ 自殺者数の年次変化と男女比

周知のことかもしれないが、
私自身の認識を確かにするという意味も含めて、
自殺者数の年次変化と男女比を、この記事の後半に記す。
統計資料としては、警察庁生活安全局生活安全企画課のデ−タをもとにして、
内閣府自殺対策推進室が作成した自殺統計を使うことにした。
厚生労働省の自殺統計は、
家族・親族(6親等以内)・施設長・病院長等から、
役所に提出された死亡届と死亡診断書をもとに作られているとのことで、
警察庁発表のデ−タの方が、自殺の実態に近い客観性を持つのではないかと考えた。

その表から明らかなように、自殺者数(自殺率)には、明白な「性差」が存在する。
しかしこの、明らかに男性に多い自殺の問題について、
内閣府男女共同参画局(以下「男女局」)は、
「性差」という言葉が好きな割には、取り上げ方が弱い。
第3次男女共同参画基本計画(H22.12.17 閣議決定)であれば、
第10分野:「生涯を通じた女性の健康支援」のように、
「性差」をもとに、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」を高らかに謳い、
女性に対して手厚い配慮を展開することそれ自体を厭うものではないが、
一方で、明らかな性差としての、男性の「いのちの危機」、
例えば、明らかに男性に多い悪性新生物による死亡や、自殺の問題については、
現実と乖離して、配慮が、あまりにも脆弱なのである。

「生涯を通じた女性の健康支援」という名の施策は、
既に、厚生労働省の母子保健課が、平成8年から行ってきた。
従って男女局は、それに上乗せをする形で、同名の施策を展開していることとなる。
この件について、私は、厚労省に電話をして、
母子保健課の「生涯を通じた女性の健康支援」について、
厚労省の中で冷遇があったか、という意味の、問い合わせをしたことがあったが、
担当者は、「そのような話は聞いたことがない」と言った。
一方、自殺対策については、平成19年に、内閣府に自殺対策推進室が設置されたが、
以後も、自殺の性差は変わることなく、
明らかに男性に多い数値として、存在し続けてきた。
しかし男女局は、第3次男女共同参画基本計画策定、そしてそれ以降の施策にあたって、
自殺の性差の問題について、現実に踏み込んだ対応を展開してこなかった。
第3次計画の予算項目の中には、
分野別予算第3分野に、自殺対策強化月間広報啓発経費の記載はあるが、
扱いは形式的色彩が強く、真摯な対峙は存在しない。

要するに、「いのちの支援」であるにしろ、「災害対応」であるにしろ、
男女局の施策は、「初めに女性優先・女性優遇の結論ありき」なのであって、
「男女の人権の尊重」を謳った「男女共同参画社会基本法第3条」との乖離は、
明らかな事実なのである。

男女局の職員の方たちの中には、
「基本法第3条」を踏まえて発言をしてくれた人も確かにいて、
電話での出会いに安らぎを与えられたこともあったが、
部局としての施策の方向には、常に、女性優先・女性優遇の発想があり、
男性軽視のフェミニズム運動家が、男女局の実権を握っていると、強く感じる。
内閣府男女共同参画局は、
その美名とは乖離した、自己本位のフェミニズム運動の拠点である。

今回取り上げた「自殺者数の年次変化と男女比」の、「性差」がもしも逆であったなら、
第3次男女共同参画基本計画の自殺対策はどうなっていただろうか ?
恐らくは、女性に対する溢れるばかりの愛に、ちりばめられていたに違いない。

(注) 下表中の「自殺率」は、人口10万人あたりの自殺者数を示す。
   ( )内の数値は、自殺率の男女比。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 年次別     総数    男    女     男女比【男/女】
                         自殺者数 (自殺率)
1978(S 53)  20,788  12,859  7,929   1.62  (1.66)
 79(S 54)  21,503  13,386  8,117   1.64  (1.69)
1980(S 55)  21,048  13,155  7,893   1.66  (1.72)
 81(S 56)  20,434  12,942  7,492   1.72  (1.78)
 82(S 57)  21,228  13,654  7,574   1.80  (1.85)
 83(S 58)  25,202  17,116  8,086   2.11  (2.18)
 84(S 59)  24,596  16,508  8,088   2.04  (2.11)
 85(S 60)  23,599  15,624  7,957   1.95  (2.02)
 86(S 61)  25,524  16,497  9,027   1.82  (1.89)
 87(S 62)  24,460  15,802  8,658   1.82  (1.89)
 88(S 63)  23,742  14,934  8,808   1.69  (1.75)
 89(H 01)  22,436  13,818  8,618   1.60  (1.65)
 90(H 02)  21,346  13,102  8,244   1.58  (1.64)
 91(H 03)  21,084  13,242  7,842   1.68  (1.75)
 92(H 04)  22,104  14,296  7,808   1.83  (1.89)
 93(H 05)  21,851  14,468  7,383   1,95  (2.03)
 94(H 06)  21,679  14,560  7,119   2.04  (2.11)
 95(H 07)  22,445  14,874  7,571   1.96  (2.05)
 96(H 08)  23,104  15,393  7,711   1.99  (2.08)
 97(H 09)  24,391  16,416  7,957   2.05  (2.14)
 98(H 10)  32,863  23,013  9,850   2.33  (2.43)
 99(H 11)  33,048  23,512  9,563   2.46  (2.57)
2000(H 12)  31,957  22,727  9,230   2.46  (2.57)
 01(H 13)  31,042  22,144  8,898   2.48  (2.59)
 02(H 14)  32,143  23,080  9,063   2.54  (2.66)
 03(H 15)  34,427  24,963  9,464   2.63  (2.76)
 04(H 16)  32,325  23,272  9,053   2.57  (2.71)
 05(H 17)  32,552  23,540  9,012   2.61  (2.73)
 06(H 18)  32,115  22,813  9,342   2.44  (2.55)
 07(H 19)  33,093  23,478  9,615   2.44  (2.56)
 08(H 20)  32,249  22,831  9,418   2.42  (2.54)
 09(H 21)  32,845  23,472  9,373   2.50  (2.64)
2010(H 22)  31,690  22,283  9,407   2.36  (2.49)
 11(H 23)  30,651  20,955  9,696   2.16  (2.27)
 12(H 24)  27,858  19,273  8,585   2.24  (2.37)
posted by 翠流 at 22:36| Comment(2) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月16日

男性の自殺(3)・・・ 原因・動機別自殺者数

「原因・動機別」の自殺デ−タを紹介する前に、書いておきたいことがある。
私は、人権の問題に取り組むようになってから、
男性軽視の、自己中心的なフェミニズム運動の存在を実感するようになったが、
だからといって、
誠意ある女性、男女双方の人権に配慮する女性に、
出会ったことがないわけではない。

たとえば、このブログの記事、「男性更衣室(2)」に書いたスポ−ツクラブの、
2人の女性スタッフ。
或いは、「裏切りの男女共同参画」に書いた「眠られぬ夜」の、
私の電話を受けとめてくれた、1人の「いのちの電話女性相談員」。
そして、内閣府と、ある地方の、
男女共同参画部局に勤務する、2人の女性。
私は、彼女たちのとの出会いを忘れない。

しかし、内閣府男女共同参画局という、部局の方向性について言えば、
男女双方の人権に配慮する職員の誠意の声は、
部局全体の、女性優先・女性優遇・男性軽視の施策の方向に巻き込まれ、
消えてゆくような気がする。
男性に対する配慮が全くないなどと、言っているわけではない。
しかし、あってもそれは、
今までの記事に書いてきたように、
女性に対する配慮に比べれば遙かに弱く、
そこには、男性に対する差別が存在するということだ。
それが、この約2年半の間、
災害対応や、健康支援や、ポジティブ・アクションの問題に引き込まれ、
学びを続けてきた私の、率直な感想である。

第3次男女共同参画基本計画や、
東日本大震災・阪神大震災を契機とした、「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(案)」の作成にあたって、
女性優先・女性優遇・男性軽視の視点で関わってきた自己本位のフェミニストたち、
もしも、彼女あるいは彼らに、
明らかに男性に多い自殺の問題について思いを聞けば、
どういう答えが返ってくるのだろう?
それは更なる裏切りの言葉か?
或いはそれを希望的に捉えて、仮に配慮の言葉が返ってきたとしても、
不信感は、それだけで消えるものではない。
それは、あなたたちが行ってきた施策、或いは、行おうとしている施策の帰結だ。
不信は、多岐に渡っている。

今回の記事には、
平成20年から24年までの5年間の、
原因・動機別自殺死亡率と、その男女比を記す。
警察庁は、自殺の「原因・動機」を、まず、「その他」をあ含めた7つの大項目に分類して数値を示し、
更に、それを細分化した、原因・動機別のデ−タを示している。
今回は、その「大項目」について、デ−タの詳細を、この記事の最下表に記した。
それをもとに、男女比を中心とした、概括的な特徴を整理すると、次のようになる。

             年間自殺者数       男女比【男/女】       
「健康問題」      13,629 〜15,867      1.28 〜 1.47      
「経済・生活問題」    5,219 〜 8,377      8.33 〜 10.27   
「家庭問題」       3,912 〜 4,547      1.69 〜 1.88      
「勤務問題」       2,412 〜 2,689      6.86 〜 8.79        
「男女問題」       1,035 〜 1,138      1.35 〜 1.78      
「学校問題」        364 〜  429      2.87 〜 3.79        
「その他」        1,535 〜 1,621      2.14 〜 2.68    

【男女比に見られる特徴】

   表から明らかなように、すべての項目について、
   自殺者数は、男性が女性を上回っている。
   この傾向は、「経済・生活問題」と「勤務問題」で特に強く、「学校問題」がそれに次ぐ。
   「経済・生活問題」では、男性の自殺者数は、女性の8〜10倍に達し、
   「勤務問題」では7〜9倍、「学校問題」では3〜4倍に達している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 デ−タの詳細は以下の通り。

【表T】 自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」
             ・・・・・原因・動機が特定できない自殺も、決して少なくはない。

      年次別     総 数   原因・動機特定者   原因・動機不特定者
    2008(H 20)  32,249   23,490(72.8%)  8,759(27.2%)
    2009(H 21)  32,845   24,434(74.4%)  8,411(25.6%)
    2010(H 22)  31,690   23,572(74.4%)  8,118(25.6%)
    2011(H 23)  30,651   22,581(73.7%)  8,070(26.3%)
    2012(H 24)  27,858   20,615(74.0%)  7,243(26.0%)

【表U】 「原因・動機特定者」の「原因・動機別の自殺者数」と男女比。

        ・・・・・この5年間の原因・動機別の自殺者数を比較すると、毎年、多い順に、
         「健康問題」「経済・生活問題」「家庭問題」「勤務問題」「男女問題」
         「学校問題」となっている(「その他」を除く)。
          「健康問題」は、昭和53年から平成19年までについても、常に1位を
          占めており、「経済・生活問題」は、平成10年から顕著に増加した。
         (内閣府自殺対策室【特集:自殺統計の分析:図3:平成25年6月】)

 「健康問題」  年次別    総 数    男    女   男女比【男/女】
       2008(H 20)  15,153  8,870  6,283   1.41
       2009(H 21)  15,867  9,460  6,407   1.47
       2010(H 22)  15,802  9,181  6,621   1.38
       2011(H 23)  14,621  8,214  6,407   1.28
       2012(H 24)  13,629  7,892  5,737   1.37

 「経済・生活問題」年次別    総 数    男    女   男女比【男/女】
       2008(H 20)   7,404  6,686   718    9.31
       2009(H 21)   8,377  7,634   743    10.27
       2010(H 22)   7,438  6,711   727    9.23
       2011(H 23)   6,406  5,740   666    8.61
       2012(H 24)   5,219  4,660   559    8.33

 「家庭問題」  年次別    総 数    男    女   男女比【男/女】
       2008(H 20)   3,912  2,503  1,409   1.77
       2009(H 21)   4,117  2,668  1,429   1.88
       2010(H 22)   4,497  2,854  1,643   1.73
       2011(H 23)   4,547  2,860  1,687   1.69
       2012(H 24)   4,089  2,591  1,498   1.72

 「勤務問題」  年次別    総 数    男    女   男女比【男/女】
       2008(H 20)   2,412  2,120   292    7.26
       2009(H 21)   2,528  2,270   258    8.79
       2010(H 22)   2,590  2,325   265    8.77
       2011(H 23)   2,689  2,347   342    6.86
       2012(H 24)   2,472  2,182   290    7.52

 「男女問題」  年次別    総 数    男    女   男女比【男/女】
       2008(H 20)   1,115   707   408    1.73
       2009(H 21)   1,121   712   409    1.74
       2010(H 22)   1,103   707   396    1.78
       2011(H 23)   1,138   645   484    1.35
       2012(H 24)   1,035   638   397    1.60

 「学校問題」  年次別    総 数    男    女   男女比【男/女】
       2008(H 20)   387   294   93    3.16
       2009(H 21)   364   270   94    2.87
       2010(H 22)   371   276   95    2.90
       2011(H 23)   429   320   109    2.93
       2012(H 24)   417   330   87    3.79

 「その他」   年次別    総 数    男    女   男女比【男/女】
       2008(H 20)   1,583  1.099  439    2.50
       2009(H 21)   1,613  1.131  482    2.34
       2010(H 22)   1,533  1.117  416    2.68
       2011(H 23)   1,621  1,106  515    2.14
       2012(H 24)   1,535  1,086  449    2.41

 【出典】  平成20・21・22年・・・・・(各年度における)自殺の概要資料
                      ・・・・・ 警察庁生活安全局生活安全企画課
       平成23・24年・・・・・・・・・(各年度における)自殺の状況
                      ・・・・・ 内閣府自殺対策推進室
                         警察庁生活安全局生活安全企画課
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2013年11月19日

自殺予防フォ−ラム

一昨日、近隣の某市で行われた「自殺予防フォ−ラム」に参加した。
以前、内閣府の自殺対策推進室に問い合わせの電話をしたとき、
「各自治体の取り組みの主体は各自治体にある」という話を聞いたが、
某市の取り組みは非常に意欲的で、感心させられた。

たとえば、ポスタ−や、相談窓口(7カ所設置)の電話番号をはさみ込んだ多数のポケットティッシュの、医療機関等への配布、
或いは、パンフレット「支え合おう心といのち」の作成、
そして、自殺、心の悩み、こども、金銭・労働、その他生活に関する困りごと等の相談機関 18カ所の連絡先を書いた「あなたにも出来る自殺予防のための行動」というパンフレットの作成など、
今後、市民への周知活動がさらに広がれば、優れた運動に発展するように思われた。

先回の記事に書いた「経済・生活問題」や「勤務問題」の自殺に見られる男性の深刻な状況については、特に取り上げるような配慮はなく、不満はあったが、
とりあえず、表面に現れた性差別はないように思われた。

近隣の他の自治体や全国の取り組み状況を知りたいと思い、質問をしたところ、
講師で来ていたある大学病院の精神科医が、東京足立区の名前を挙げた。
まだその取り組みは確認していないが、
「地域により温度差がある」という精神科医の言葉から、
意欲的な自治体は必ずしも多くはないという印象を受けた。

ちなみに、私の居住地では、1年半ほど前であったか、
男女共同参画課が、「男女共同参画」であるにもかかわらず、
例によって「女性支援センタ−」であるかの如き気まぐれをおこし、
「女性限定」の電話相談を開設したことがあったが、
それ以外に、自殺対策にもつながると思われる取り組みは聞いたことがない。

この電話相談の件について、当時の担当係長(女性:現在は他の部局へ転出)に、
「女性限定」である理由を聞いたところ、
彼女は、相談員が女性で、しかも一人しかいないことをあげた。
しかし、実は、ある相談活動に、相談員として関わってきた私の認識からすれば、
少なくとも精神面での相談活動は、
相談者と相談員が同性でなければならないとか、
同性であれば成功するとか、そういう限定的な性質のものではない。
わかりやすい例として、逆に私が相談者であったときの経験をあげれば、
このブログの「裏切りの男女共同参画」の冒頭のような状況の中で、
呻吟する私に、ひとときの安らぎを与えてくれたのは、
「いのちの電話」の「女性」相談員であった。

要するに、心の相談活動の成否は、
相談者と相談員の感受性、そして、電話を受けた相談員の資質によって決まるのであって、
女性課長はそれを認識していなかったか、或いは、仮に認識していたとすれば、彼女の心の中では、
「はじめに結論ありき」の「女性優先」の思いが先行していたのだろうと思う。
相談員が女性の場合、男性からのいたずら電話が危惧される一面はあるが、
それは、電話相談では、決して珍しいことではなく、
相談員に、それをかわす覚悟と訓練が必要なのは、常識的当たり前であろう。
私は、男性に明らかに多い自殺の問題や、今の日本の男性の幸せ感が女性より低いことなども話題にしたが、彼女は、「自殺対策は別の部局でやっている」などと言った。
しかし、私自身が、かつて自殺に近づいた経験を持ち、必死に相談機関を探したことのある人間であることや、その後も、人権問題や相談員活動との関わりの中で、相談機関や自殺対策に近い位置で生活してきたにもかかわらず、公的機関の自殺対策に触れたことが、ただの一度もなかったことを考えれば、
自殺対策の部局は、仮にあったとしても、市民に対する周知活動の欠落という点で、
あってなきが如しだったのである。

話題を「自殺予防フォ−ラム」に戻す。
私は、フォ−ラムの翌日、某市の自殺対策の中心となっている人に、手紙を出した。
主な内容は、自殺の実態を知るためのデ−タとして、
厚生労働省の人口動態統計と、警察庁の自殺統計の、
どちらを使うのが妥当かについての、私の発言である。
それを次に掲載する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

○○市○○課 ○○様

昨日は「○○市自殺予防フォ−ラム」に参加させていただき、ありがとうございました。
特に「○○市における自殺対策の取り組み」は大変有益でしたが、
最後に質問をさせていただきました「全国の自殺者数」のデ−タの件につきまして、
発言を補足させていただきます。
お話いただきました、在日外国人の自殺者数が、厚労省の人口動態統計に含まれていない件、
私自身も、確認いたしましたが、外国人であっても、日本在住であれば、
個人による事情の違いがあるとはいえ、
日本の社会状況の、何らかの影響下で自殺をした可能性は否定できないように思います。
とすれば、自殺者数を、社会の問題状況の指標として捉えるとき、
在日外国人の自殺者数を除外して考えるのはいかがなものか?
という疑問を捨てきれません。
また、在日外国人の方たちに対する人権上の配慮、或いは自殺対策という観点から考えても、
たとえ数値だけであっても除外することには疑問が残ります。
会場で発言させていただきました「自殺であるか否かの判断」の、
警察庁と厚労省の違いの件、
厚労省が医師の死亡診断書と死亡届もとに人口動態統計を作成していることに対する疑問、つまりは、自殺であることを隠すための虚偽の申告の可能性が、
自殺の実態把握の妨げになる危惧も含め、
私は部外者ではありますが、改めて発言させていただきます。

尚、別件ではありますが、
当日、会場入り口の近くに掲示してあった2種類のポスタ−のうち、
新しいものなのでしょうか?、中央のハ−トの図柄の中に、
多数の歯車が描かれているポスタ−を、
個人的に入手できないでしょうか?(1〜2枚)
掲示許可の手続きが必要な場所に貼ることはありません。
もしも入手可能であるならば、
大変お手数ではありますが、入手方法等、必要事項を、
次の E-mail アドレスに、ご連絡いただけないでしょうか。
   ○○○・・・・・・・・・・・
私は、そちらのご都合に合わせて、取りに行くことが可能です。

ところで過日、内閣府自殺対策推進室に問い合わせの電話をしましたとき、
「各自治体の取り組みの主体は各自治体にある」という話を聞きました。
○○市のような取り組みが全国に波及し、
孤独の中で呻吟する人たちに対して、
細やかな配慮の相談体制が確立されることを祈ります。
貴重なお話、ありがとうございました。

                    2013年11月18日 ( 翠 流 )
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2014年07月03日

男性の自殺 (4) 2013年の状況と、就職失敗による若者の自殺

 ◆ 警察庁生活安全局生活安全企画課のデ−タに基づく「平成25年中の自殺の状況(H
 26.3.13)」が、内閣府自殺対策推進室のHPに掲載されている。今回は、まず、それ
 を、今までの記事と同じ観点で整理し(下記 T・U・V)、続いて、Vで7項目に分
 類された「原因・動機」を、更に52の小項目に分類したデ−タを、特に男女比に着目
 して掲載する(下記 W)。また、小項目の中から、特に、「就職失敗による自殺」を、
 20代の若者について取り上げ、H20年からH25年までの6年間のデ−タを掲載する
 (下記 X)。Xについては、昨年の春、警察発表のニュ−ス「就活失敗し自殺する若
 者急増」として報道された。                         

   T.自殺者数と男女比                          
   U.自殺の「原因・動機特定者数」と「原因・動機不特定者数」       
   V.原因・動機特定者の「原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)」と男女比  
   W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52項目)」と男女比   
   X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合          

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

T.自殺者数と男女比                 
                           男女比【男/女】    
      総 数      男       女    自殺者数(自殺率)    
      27,283    18,787    8,496    2.21 (2.33)    
               (自殺率は、人口10万人あたりの自殺者数を示す)

U.自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」            

      総 数     原因・動機特定者     原因・動機不特定者    
      27,283    20,256(74.2%)    7,027(25.8%)    

V.原因・動機特定者の「原因・動機別の自殺者数(大分類:7項目)」と男女比。   

     (原因・動機)  (計)  (男性) (女性)  【 男性 : 女性】  
      家庭問題    3,930  2,477  1,453   【 1.70 : 1 】  
      健康問題    13,680  7,909  5,771   【 1.37 : 1 】  
      経済生活問題  4,636  4,147   489   【 8.48 : 1 】  
      勤務問題    2,323  2,069   254   【 8.14 : 1 】  
      男女問題     912   552   360   【 1.53 : 1 】  
      学校問題     375   271   104   【 2.60 : 1 】  
      その他     1,462  1,052   410   【 2.56 : 1 】  

   (注意) 遺書等の自殺を裏付ける資料により、明らかに推定できる原因・動機を、
     自殺者一人につき3つまで計上可能としているため、原因・動機特定者の原因
     ・動機別自殺者数の和と、原因・動機特定者数(20,256)とは一致しない。

◆ 経済状況の若干の好転が主因であろうと私も推測するが、昨年・一昨年は、年間自殺
 者数が3万人を割った。しかし、1日の自殺者は、両年とも75人前後に達しており、
 状況は今も深刻である。そして男女比を見れば、相変わらず、男性の自殺が明らかに多
 いのである。しかし、内閣府男女共同参画局は、このような、男性が置かれた状況につ
 いて、踏み込んだ施策を行っていない。この件については、記事「男性の自殺(2)」
 に、具体的な事実を交えて書いたが、自殺問題に限らず、たとえば、東日本大震災関連
 の災害対応全般についても、既にこのブログで取り上げてきた様々の事例からわかるよ
 うに、男女局は、女性の困難に対しては、非常に手厚い配慮と共感性を持って、意欲的
 に施策を行おうとするが、男性の困難に対しては、関心の低さ、或いは無関心が目立つ
 のである。                              
  最近の例で言えば、担当係長が新任であるために、確認の話が進んでいないが、5月
 14日に掲載した記事、「被災地における、女性の悩み・暴力相談事業(2)」に記した
 ような実態がある。この事業については、名称を、たとえば「被災者の悩み・暴力相談
 事業」のように修正し、男女双方を対象とした相談事業であることを明示しなければ、
 男性の人権は無視されたままであるが、昨年の12月に、前任の係長と、あれほど話し
 をしたにもかかわらず、結局わかっていただけなかったようなのである。被災した男性
 の心の状況については、男女局自身の調査デ−タもあり、担当者はそれを十分承知のは
 ずであるし、仮にデ−タがなかったとしても、「男女共同参画」局が行うこの相談活動
 の対象から、男性を外してよいはずはない。ちなみに、内閣府自殺対策推進室のデ−タ
 によれば、東日本大震災に関連する自殺者数は、今年の5月までの累計で、男性が89
 人、女性が38人、性比は、男性:女性=2.34:1 となっている。               

◆ 自殺対策や災害対応に限らず、このような批判をいつまで続けなければならないのか
 と、憲法第14条の存在にまで疑義を抱かざるを得ないような日々があり、率直なとこ
 ろ疲労感が強いのであるが、要するに、内閣府男女共同参画局は、概括的には、と一応
 書くが、初めに結論ありきの、女性優先・女性優遇・女権拡大・男性軽視・男性無視・
 男性差別の部局であると感ぜざるを得ないような事実が、非常に多いのである。私が初
 めて「男女共同参画」という言葉を意識したのは、今から10数年前であったと思うが、
 当時の私は、このような実態は想定していなかった。男女双方の人権が尊重され、男女
 が信頼関係で結ばれる社会、それを、憲法第14条に則って推進するのが、「男女共同参
 画」だと思っていた。しかし現実はそうではなかった。内閣府男女共同参画局は、「男
 女共同参画」という美しい言葉によって、男性に対する人権軽視・人権無視・男性差別
 を隠蔽した、憲法第14条違反の、そして、男女共同参画社会基本法第3条違反の、自
 己本位のフェミニズム運動の拠点である、と言って、「概括的には」という言葉を、と
 りあえずもう一度つけ加えるが、誤りはないと感じている。            

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(51小項目)」と男女比。    

 ◆ 各項目の人数から男女比を求め、性差が大きい順に配列した。51の小項目のうち、
  自殺者が男性に多い項目は48に及ぶ。圧倒的な多数である。改めて、男性が困難に
  直面しやすい社会状況を感じるが、同時に、男性が抱える脆さ、弱さを感じる。男性
  が強いのは、筋力だけではないかと思ったりもする。状況適応能力の弱さ、自己防衛
  能力の弱さ、逸脱傾向。そして、表面には現れにくくなっているかもしれないが、「男
  性は強くなければならない」とか、「責任がある」とか、「家庭を守らなければなら
  ない」とか、「一人で苦しみに耐えなければならない」とか、そういう固定的性別観
  が、恐らくは今も社会の中に根強く残り、男性を呪縛している。先日、ある若い女性
  と話しをした、彼女は今、一人の男の子の母親である。そしてもうすぐ、二人目の男
  の子の母親となる。彼女は、私との会話の中で言った。「男の子だから、強く・・・・・」。
  私は、彼女の言葉に、さりげなく頷く。しかし心の中では、特にこれからの社会の中
  で、二人が男の子が歩まなければならない難しい道と、彼らの母親としての彼女の、
  安らかになれない生活を思う。                        

 ◆ 下表の男女比は、少ない方を1として示してある。各項目が属する大項目は、表中
  の語尾に、次の略記号で示した。         
     家庭問題:K1  健康問題:K2  経済生活問題:K3  勤務問題:K4  
     男女問題:D1  学校問題:G1  その他:S1             

(原因・動機)  (男 女 比)    (人 数)      
                 【 男性 : 女性 】 (男性) (女性) (計) 
倒産:K3             【 45.00 : 1 】   45   1    46   
負債(連帯保証債務):K3     【 20.00 : 1 】   20   0    20   
負債(多重債務):K3       【 15.78 : 1 】  647   41   688  
事業不振:K3           【 15.77 : 1 】  568   27   438  
失業:K3             【 14.67 : 1 】  411   28   439  
職場環境の変化:K4        【 12.17 : 1 】  280   23   303  
就職失敗:K3           【 10.91 : 1 】  251   23   247  
犯罪発覚:S1           【 9.87 : 1 】  158   16   174   
仕事疲れ:K4           【 9.46 : 1 】  587   62   649   
その他:K4            【 8.85 : 1 】  354   40   394   
負債(その他):K3        【 8.49 : 1 】  773   91   864   
借金の取り立て苦:K3       【 7.83 : 1 】   47   6    53   
自殺による保険金支給:K3     【 6.66 : 1 】   60   9    69   
生活苦:K3            【 5.51 : 1 】 1,081  196  1,277   
子育ての悩み:K1         【 1: 4.62 】   24  111   135   
職場の人間関係:K4        【 4.28 : 1 】  437  102   539  
その他:K3            【 4.20 : 1 】  244   58   302   
教師との人間関係:G1       【 4.00 : 1 】   4   0    4    
その他:S1            【 3.55 : 1 】  462  130   592   
そのほかの進路に関する悩み:G1  【 3.53 : 1 】   92   26   118   
病気の悩み・影響(アルコ-ル依存症):K2【 3.46 : 1 】  163   47   210   
入試に関する悩み:G1       【 3.28 : 1 】   23   7   30   
学業不振:G1           【 3.09 : 1 】  102   33   135   
夫婦関係の不和:K1        【 2.67 : 1 】  729  273  1,002  
身体障害の悩み:K2        【 2.57 : 1 】  198   77   275   
家族からのしつけ・叱責:K1    【 2.51 : 1 】  108   43   151   
失恋:D1             【 2.40 : 1 】  207   86   293   
その他:G1            【 2.27 : 1 】   25   11   36   
病気の悩み(身体の病気):K2   【 2.03 : 1 】 2,993 1,470 4,463   
その他:D1            【 2.00 : 1 】   36   18   54   
家族の将来批判:K1        【 1.89 : 1 】  384  203  587  
その他:K2            【 1.88 : 1 】  166   88   254   
その他:K1            【 1.82 : 1 】  217  119  336  
孤独感:S1            【 1.75 : 1 】  339  193  532   
近隣関係:S1           【 1.71 : 1 】   36   21  57   
そのほかの家族関係の不和:K1   【 1.61 : 1 】  277  171  448  
介護・看病疲れ:K1        【 1.57 : 1 】  164  104  268  
結婚をめぐる悩み:D1       【 1.43 : 1 】   53   37  90   
病気の悩み・影響(薬物乱用):K2  【 1.40 : 1 】   35   25   60   
家族の死亡:K1          【 1.36 : 1 】  313  229  542  
いじめ:G1            【 1.33 : 1 】   4   3   7   
親子関係の不和:K1        【 1.30 : 1 】  259  198  457  
犯罪被害:S1           【 1.25 : 1 】   5   4    9    
不倫の悩み:D1          【 1.22 : 1 】   91   74   165   
病気の悩み・影響(統合失調症):K2 【 1.21 : 1 】  694  571  1,265  
病気の悩み・影響(他の精神疾患):K2【 1.20 : 1 】  721  600  1,321  
そのほかの学友との不和:G1    【  1: 1.14 】   21   24   45   
そのほかの交際をめぐる悩み:D1  【 1.13 : 1 】  165  145  310  
後追い:S1            【 1.13 : 1 】   52   42   98    
病気の悩み・影響(うつ病):K2   【 1.01 : 1 】 2,939 2,893 5,832   
被虐待:K1            【  1 : 1 】   2    2   4    

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

 ◆ 昨年の春、インタ−ネットで、警察発表のニュ−ス「就活失敗し自殺する若者急
  増」を見た。2008年から昨年までのデ−タを見れば、下表の通り、その8割から
  9割を男性が占めている。このような現実があるにもかかわらず、安倍晋三は「光
  り輝く女性」発言ばかりをくり返し、例えば、今年2月の記事「国家公務員採用試
  験」に記したような、男性差別の不正女性優遇採用を推進している。彼の口から、
  呻吟する若い男性に配慮する言葉は聞こえてこない。私に聞こえてこないというこ
  とは、若い男性にも聞こえていないということだ。経済政策がどうのとか、若者支
  援がどうのとか、そういうことではない。苦しむ若い男性を救う直接的な愛の言葉
  が、今の日本にあるかどうか、そういう言葉を、安倍晋三が発しているかどうか、
  そういう問題なのである。

 ◆ カ−ラジオを聞いていれば、今日も、人身事故が原因の、列車の遅延情報が聞こ
  えてくる。私はそのニュ−スを聞いて、既に述べてきた固定的性別観や、日々進行
  する不当な女性優遇の中で、就職失敗という、男性にとって厳しい現実を前にして、
  線路に投身する彼らの姿を思う。                      

         年次別    総数  男性  女性  男性の割合       
       2008(H 20)   86   69   17   80.2 %       
       2009(H 21)  122   98   24   80.3 %        
       2010(H 22)  153  138   15   90.1 %        
       2011(H 23)  141  119   22   84.3 %        
       2012(H 24)  149  130   19   87.2 %        
       2013(H 25)  104   95   9   91.3 %

        
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2015年03月19日

男性の自殺 (5) 2014年の状況

3月12日付で、内閣府自殺対策推進室が、
2014年の「自殺の統計」を公開した。
その日であったか、NHKラジオを聞いていたら、
女性キャスターが、「自殺者数が 6.8%減った」と言った。

しかし彼女は、性差の問題には触れなかった。
下表Tに示すように、2014年の自殺にも「明白な性差」があるが、
彼女は、「今回もまた男性の自殺が多かった」、とは言わなかったのである。
以前、記事として取り上げたことのある、某市の自殺予防フォーラムもそうであった。
経済生活問題の相談機関の代表者は出席していたから、
配慮の内実はあったのだろうが、
「自殺は男性に多い」という意味の言葉は、
フォーラムの間中、一言も聞こえてこなかった。

どこかの国の首相も同じである。
「光り輝く女性」発言ばかりを繰り返して、
男性を、困難から、特にその局限としての自殺から、
救おうとする言葉を発してこなかった。
経済政策であるとか、地方再生であるとか、若者支援であるとか、
そういう言葉だけでは不足なのである。
「男性」という言葉を、明確に前面に押し出して、
男性の困難にも手を差し伸べるような、そういう土壌を、
社会の中に作り出すことが重要なのである。

男性の苦しさは、強く前面に出すべきではない。
男性の困難は、できるだけ控えて表現するべきである。
そういう「性別観」「性別役割意識」が、
今も、社会に根を張り、私たちの日常を支配している。
それを変えなければ、自殺の性差の問題は、解決しないと思う。

前述の自殺予防フォーラムを企画した某市が、
初めに作った自殺予防のポスターには、
中央に、悩む女性のイラストだけが描かれていた。
それは、私たちの社会に根を張る「性別観」の象徴であり過ぎるとして、
私は、担当の部局に抗議の電話を入れた。
勿論、ただの一市民の発言でしかないから、
偶然の所産であろうが、
フォーラムの会場に掲示された新しいポスターには、
青い背景の中に、多数の絡み合った臙脂色の歯車が、
心を模るように描かれていた。
苦しみながら自殺に向かう人は、
性別とは無関係に、等しく救われなければならない。

2014年の自殺データは、下記の通り。
昨年の記事「男性の自殺(4)」と同様に整理した。

【項目】T.自殺者数と男女比                         
    U.自殺の「原因・動機特定者数」と「原因・動機不特定者数」      
    V.原因・動機特定者の「原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)」と男女比 
    W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52項目)」と男女比  
    X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合         

◆ なお、近日中に、内閣府男女共同参画局に「自殺対策要望書」を送る。
また、追って、同様の趣旨の要望書を、内閣府自殺対策推進室に送る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【 2014年 自殺データ 】

T.自殺者数と男女比 ・・・ 自殺死亡率(自殺率)は、人口10万人あたりの自殺者数を示す。
                           男女比【男/女】    
      総 数      男       女    自殺者数(自殺死亡率)   
      25,427    17,386    8,041    2.16(2.28)      
          
U.自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」            

      総 数     原因・動機特定者     原因・動機不特定者    
      25,427    19,025(74.8%)     6,402(25.2%)    

V.原因・動機特定者の「原因・動機別の自殺者数(大分類:7項目)」と男女比。   

     (原因・動機)  (計)  (男性) (女性)  【 男性 : 女性】  
      家庭問題    3,644  2,227  1,417  【 1.57 : 1 】  
      健康問題    12,920  7,418  5,502  【 1.34 : 1 】  
      経済生活問題  4,144  3,688   456  【 8.08 : 1 】  
      勤務問題    2,227  1,988   239  【 8.31 : 1 】  
      男女問題      875   555    320  【 1.73 : 1 】  
      学校問題     372   300    72  【 4.16 : 1 】  
      その他     1,351   961   390  【 2.46 : 1 】  

   (注意) 遺書等の自殺を裏付ける資料により、明らかに推定できる原因・動機を、
     自殺者一人につき3つまで計上可能としているため、原因・動機特定者の原因
     ・動機別自殺者数の和と、原因・動機特定者数(19,025)とは一致しない。

W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52小項目)」と男女比。    

 ◆ 下表の男女比は、少ない方を1として示してある。              
  男性の自殺は、52項目中 51項目で女性を上回っている。
  各項目が属する大項目は、表中の語尾に、次の略記号で示した。        

      健康問題:A  経済生活問題:B  家庭問題:C  勤務問題:D 
      男女問題:E  学校問題:F  その他:G             

(順位)(原因・動機)         (男 女 比)     (人 数)    
                  【 男性 : 女性 】  男性  女性  計  
1 負債(連帯保証債務):B      【 25.0 : 1 】   25    1   26   
2 負債(多重債務):B        【 16,8 : 1 】  639   38  677 
3 仕事の失敗:            【 13.4 : 1 】  376   28  404 
4 借金の取り立て苦:B        【 13.3 : 1 】   53   4   57  
5 事業不振:B            【 12.8 : 1 】  486   38  524  
6 負債(その他):B         【 11.2 : 1 】  639   57  696  
7 職場環境の変化:D         【 10.9 : 1 】  251   23  274 
8 仕事疲れ:D            【 10.0 : 1 】  623   62  685 
9 倒産:B              【 9.7 : 1 】   29   3   32  
10 自殺による保険金支給:B     【 9.3 : 1 】   74   8   82  
11 失業:B             【 8.9 : 1 】  337   38  367  
12 就職失敗:B           【 8.3 : 1 】  232   28  260  
13 その他:D            【 8.2 : 1 】  320   39  359  
14 犯罪発覚:G           【 7.7 : 1 】  153   20  173  
15 子育ての悩み:C         【 1: 5.9 】   19  112  131  
16 学業不振:F           【 5.7 : 1 】  102   18  120  
17 生活苦:B            【 5.1 : 1 】  916  178 1,094  
18 入試に関する悩み:F       【 5.0 : 1 】   20   4   24  
19 病気の悩み・影響(アルコ-ル依存症):A【 4.9 : 1 】  156   32  188  
20 職場の人間関係:D        【 4.8 : 1 】  418   87  505  
21 そのほかの進路に関する悩み:F  【 4.2 : 1 】  106   25  131  
22 その他:B            【 3.6 : 1 】  258   71  329  
23 教師との人間関係:F       【 3.5 : 1 】   7   2    9  
24 その他:F            【 3.3 : 1 】   33   10   43  
25 いじめ:F            【 3.0 : ー 】   3   0    3  
26 その他:G            【 2.7 : 1 】  372  136  508  
27 夫婦関係の不和:C        【 2.6 : 1 】  637  247  884  
28 失恋:E             【 2.5 : 1 】  198   78  276  
29 犯罪被害:G           【 2.5 : 1 】   5   2   7  
30 家族からのしつけ・叱責:C    【 2.4 : 1 】  104   44  148  
31 そのほかの学友との不和:F    【 2.2 : 1 】   29   13   42  
32 その他:E            【 2.2 : 1 】   46   21   67  
33 近隣関係:G           【 2.1 : 1 】   47   22   69  
34 身体障害の悩み:A        【 2.1 : 1 】  211   99  310  
35 被虐待:C            【 2.0 : ー 】   2   0    2  
36 病気の悩み・影響(薬物乱用):A  【 2.0 : 1 】   42   21   63  
37 病気の悩み(身体の病気):A   【 2.0 : 1 】 2,724 1,395 4,119
38 孤独感:G            【 1.9 : 1 】  328  174  502  
39 家族の将来悲観:C        【 1.6 : 1 】  330  207  537  
40 後追い:G            【 1.6 : 1 】   56   36   92 
41 そのほかの家族関係の不和:C   【 1.5 : 1 】  228  150  378  
42 そのほかの交際をめぐる悩み:E  【 1.5 : 1 】  184  122  306  
43 家族の死亡:C          【 1.5 : 1 】  314  215  529  
44 その他:C            【 1.5 : 1 】  196  135  331  
45 親子関係の不和:C        【 1.3 : 1 】  261  197  458  
46 不倫の悩み:E          【 1.3 : 1 】   92   71  163  
47 その他:A            【 1.3 : 1 】  150  118  268  
48 結婚をめぐる悩み:E       【 1.3 : 1 】   35   28   63  
49 介護・看病疲れ:C        【 1.2 : 1 】  136  110  246  
50 病気の悩み・影響(他の精神疾患):A【 1.2 : 1 】  711  596 1,307  
51 病気の悩み・影響(統合失調症):A 【 1.1 : 1 】  635  591 1,226  
52 病気の悩み・影響(うつ病):A   【 1.1 : 1 】 2,789 2.650 5,439  


X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

        年次別    総数  男性  女性  男性の割合         
      2008(H 20)   86   69    17   80.2 %         
      2009(H 21)  122   98    24   80.3 %         
      2010(H 22)  153  138   15   90.1 %         
      2011(H 23)  141  119   22   84.3 %         
      2012(H 24)  149  130   19   87.2 %         
      2013(H 25)  104   95    9   91.3 %         
      2014(H 26)  110   95   15   86.3 %

        
posted by 翠流 at 21:49| Comment(2) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月31日

自殺対策要望書

内閣府男女共同参画局へ「自殺対策要望書」を送った。
男女局は、第三次男女共同参画基本計画の第1部「基本的な方針」に、
「男女共同参画社会の実現は、女性にとっても男性にとっても生きやすい社会を作ることであり、
政府一体となって取り組むべき最重要課題である」などと書きながら、
実際には、男性の人権を軽視、或いは無視した、
「女性優先・女性優遇・女権拡大」の施策を行ってきた。
その特徴は、日本国憲法第14条(法の下の平等)との乖離、
そして、男女共同参画社会基本法第3条(男女の人権の尊重)との乖離である。
「男女共同参画」という「美名」で「本質」を隠した、
自己本位のフェミニズム運動の拠点、裏切りの「内閣府男女共同参画局」。
「かつて女性は差別されてきた」という言葉を、粗雑に、乱雑に使い、
「男性差別の施策」を、平然と行ってきた内閣府男女共同参画局。
全国の男女共同参画部局で流行語のようになった「男女共同参画の視点」という言葉は、
その本質と乖離して、「女性優先・女性優遇の視点」と同義になってしまっている。
「男は我慢すべきだ」、「男は女を優先させるべきだ」
「男は、男であることを理由に差別されても、不満を言ってはならない。それが男らしさの
規範なのだ」、というような性別観、性別役割意識の男たちは、
私のような発言をしない。
そして、その上にアグラをかいた内閣府男女共同参画局は、
恐らくは、女性優先・女性優遇の視点のままに、
もう既に、「第四次男女共同参画基本計画」の策定に入っている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回の要望書は、次の4つの内容に分かれている。
  (1) 自殺の状況と「性差」の再認識   (2) 男性に対する性別観・性別役割の呪縛 
  (3) 男女共同参画局としての「男性に対する支援」のあり方について (4) 要望の要約
このうち、(1)と(2) は、
1月30日の記事「投稿原稿-4:男性の人権を守るために【2】」の内容を使っている。
ただし【表】の数値は、3月19日の記事「男性の自殺(5)」に掲載した2014年のデータを加えて
修正した。【表3】については、2014年のデータと差し替えた。

今回は、長い要望書になってしまった。
「投稿原稿-4」の内容をご存じの方は、
(3)と(4)だけをお読みいただいても、思いは伝わると思う。
なお、同様の趣旨の要望書を、後日、内閣府自殺対策推進室にも送る予定。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                                 平成27年3月29日
内閣府 男女共同参画局 御中              
                                   翠 流 
                 要 望 書    

        年間自殺者数に見られる「明白な性差」の再認識と、    
      男女共同参画局としての「男性に対する支援」のあり方について。
                   ◆                   
標記の件に関わる事項を次の4項目に分け、状況認識と要望を記させていただきます。
  (1) 自殺の状況と「性差」の再認識   (2) 男性に対する性別観・性別役割の呪縛 
  (3) 男女共同参画局としての「男性に対する支援」のあり方について (4) 要望の要約

(1)自殺の状況と「性差」の再認識                        

  すべての人は等しく尊重されるべき「いのち」を持ち、社会は、苦しみの中で自殺に向
 かう人に、救いの手を差し伸べなければならないと思います。勿論、この視点が日本の社
 会にないわけではなく、1998年に年間自殺数が3万人を越えて以降、国政レベルでは、
 自殺対策基本法の制定、内閣府への自殺対策推進室の設置、そして自殺総合対策大綱の策
 定などが行われてきました。全国各地の取組みは、自治体により差があると聞きますが、
 私の居住県であれば、●●市の、自殺予防フォ−ラムに「結実した」と表現したくなるよ
 うな取組みがありましたし、県としては、自殺対策アクションプランの策定に向けた取組
 みがありました。そういう、全国に広がった自殺対策の成果であるのか、或いは、若干の
 好転とも言われる経済状況の変化の帰結であるのか等、主因は、自殺対策の担当者に聞い
 ても定かにはなりませんが、2012年から、年間自殺者数は3万人を割りました。しかし
 このような変化の中にあっても、変わらない事実があります。それは、自殺者が明らかに
 男性に多いという、「明白な性差」なのです。                    

  ご存じのように、内閣府自殺対策推進室は、警察庁が集計した自殺データを整理し、「自
 殺の状況」としてホームページに掲載していますが、今回、この要望書を作成するにあた
 り、それを、特に性差に着目して整理し直し、下記のような【表1】〜【表4】として、ま
 た、併せて、震災関連自殺データとして、「男女共同参画白書平成24年全体版・第1-特-31
 図:東日本大震災に関連する自殺者数の男女別割合」に示された数値を、【表5】として、
 末尾の「関連資料」に掲載させていただきました。

  【表1】年間自殺者数の推移と男女比(1978〜2014年:37年間)         
  【表2】原因・動機(大分類:7項目)別自殺者数と男女比(2008〜2014年:7年間)
  【表3】原因・動機(小分類:52項目)別自殺者数と男女比(2014年)      
  【表4】就職失敗による若者(20代)の自殺と男性の割合(2008〜2014年:7年間)
  【表5】東日本大震災に関連する自殺者数の男女別割合(H23年6月〜24年2月)   

  「関連資料」の【表1】に示されたような自殺者数の性差は、既に周知のことと思われ
 ますが、1978年から2014年までの37年間、毎年例外なく、男性の自殺が女性を上回っ
 ています。それ以前も、恐らく同様ではないかと推測します。警察庁は、自殺の原因・動
 機を大きく7項目(表2)に分類し、更にそれを52の小項目(表3)に分類していますが、
 大分類では、【表2】の通り、7項目全てで男性の自殺が女性を上回り、特に「経済・生活
 問題」では、男性の自殺が女性の8〜10倍、また「勤務問題」では7〜9倍に達していま
 す。小分類では、【表3】のように、52項目中51項目で男性の自殺が女性を上回り、女性
 が男性を上回るのは1項目となっています。また、一昨年の春、就職活動失敗による若者
 の自殺の増加が報道されましたが、その状況を、この7年間について性別と共に示せば、【表
 4】のように、自殺者の8割から9割を男性が占めているのです。

  このように、日本の社会には、長期に渡って、自殺者数の明らかな性差が存在します。
 男性には、より多くの「生きにくさ」があるのです。ですから私たちは、この事実を見つめ
 直し、男性に対する、更なる「支援の方法」を探し求める必要があるのではないでしょうか。

(2)男性に対する性別観・性別役割の呪縛                     

  前述の「男性の生きにくさ」に関わって、長い間社会に存在し続けてきた「男性に対する
 性別観・性別役割」の問題があると思います。この件について、内閣府男女共同参画局と私
 の認識に共通性が全くないわけではなく、それは例えば「第三次男女共同参画基本計画・第
 2部・第3分野・具体的施策・キ」や、「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針ーp.3
 ・p.4」等に記されていますが、その補強と再確認のために、発言をさせていただきます。

  「男性に対する性別観」、そして「男性が抱えざるを得ない性別役割意識」は、今も、男
 性にストレスを与え、男性を追い詰める要素を孕みながら、私たちの日常に深く根を張っ
 ていると思います。例えば、「男性は強くなければならない。困難に耐えなければならない。
 孤独に耐えなければならない。弱音を吐いてはならない。」「男性は家庭を支える経済力を
 持たなければならない。家庭を守らなければならない。」「男性は女性を守らなければなら
 ない。女性のために自分を犠牲にしなければならない。男性だからという理由で人権を軽
 んじられても、差別されても、不満を言ってはならない。それが男らしさの規範なのだ・・・」
 というように・・・。

  具体的な例を挙げます。例えば、私の知人に、ある相談活動に従事する男性がいますが、
 彼はある時こう言ったのです。「私は女性から相談を受けると、その人の気持ちに寄り添い、
 親切に対応しようとするが、男性から相談を受けると『男なんだから一人でやってみろ』
 と言いたくなってしまう」と・・・。彼は、根はいい人間ですから、今はもう姿勢を変えたと
 思いたいのですが、相談活動はいずれにしても、彼と会話をしていると、同様の性別観、
 性別役割意識の押しつけが随所に現れます。要するに、彼は、何事につけても初めに結論
 ありきで、男性に対して、困難や孤独や我慢や被差別の受容を要求します。そして彼は、
 その要求が男性に与えるストレスを理解しようとしないのです。           

 また、私が時折会話をする20代の女性ですが、彼女の第一子は男の子で、ある日彼女は、
 彼の未来について、「男の子だから強く・・・」と言ったのです。それは、とりもなおさず彼女
 の愛の一つの形でしょうし、社会通念的にも受け入れられやすく、強くなるのは、本人の
 人格に愛の欠落がなければ大変結構なことだと、私は、性別とは無関係に思っていますが、
 彼が、将来、解決不能の危機に直面した時、彼は、「男性」であるが故に、「逃げ場のない
 性別観・性別役割意識」を背負い、追い詰められる可能性が高いと思うのです。    

  時代の変化を見ると、今の日本には、「男のくせに」とか「女のくせに」とか、そういう
 表現をタブ−とする価値観は広がりつつあるようで、私はこの変化を、性的偏見の排除や、
 人間の多様性を認め個人の人権を尊重する視点から、大変好ましく思っていますが、しか
 し現実的には、それはまだ、甚だ表面的な現象なのであって、男性は、今も、従来からの
 男らしさの規範、男性であるが故の呪縛を、陰に陽に押しつけられるし、自分からも背負
 うことが多く、その影響は、例えば若者の自殺、具体的には、「関連資料」【表4】に示さ
 れた「就職活動失敗による自殺者の8割から9割を男性が占める」というような現実とし
 て、現れているのではないでしょうか。                      

  この要望書の初めに記しましたような事実、自殺対策の全国的な高まりの中にあっても、
 自殺が明らかに男性に多いという「性差」が変わらない現実の背後には、恐らくは、上に
 述べような、男性に対する性別観・性別役割の呪縛の問題があると思います。そして、こ
 のような主張は、私だけがしているわけではない。例えば、中央大学の山田昌弘氏は、ワ
 レン・ファレルの著書「男性権力の神話」(久米泰介訳.作品社)の推薦文の冒頭で、次の
 ように述べているのです。

     なぜ女性のつらさは問題にされるのに、                   
              男性の生きづさは問題にされないのだろう。
                           (中央大学教授 山田昌弘)

  そして、このような現実と、男性の自殺との関わりは、例えば、次のような文章で表現
 することができると思うのです。                         

     自殺者の男女比が、もしも逆であったら、                 
     日本中が大騒ぎになっているような気もする。               
     女性団体はたぶん、その現実を放置しないだろう。             
     保護を求める女性たち、保護を受け入れられる女性たち、          
     しかし保護を求めることができずに、                   
     「男性」であることを背負いながら、                   
     孤独のうちに死んでいく男たちがいる。                  

(3)男女共同参画局としての「男性に対する支援」のあり方について。

  「関連資料」【表1】〜【表5】に示された自殺者数の「性差」をふまえ、私は、内閣府
 男女共同参画局(以下、「男女局」と略す)に対して、自殺者数全体を減らす取組みだけで
 はなく、特に「男性の自殺を減らすための積極的な改善措置」を要望します。「第三次男女
 共同参画基本計画」の、「第1部:基本的な方針」にもあるように、「男女共同参画社会の
 実現は、女性にとっても男性にとっても生きやすい社会を作ることであり、政府一体とな
 って取り組むべき最重要課題である」はずです。                  

  尤も、男性の自殺の問題について、内閣府男女局が対策を全く講じていないわけではな
 く、例えば、「男女共同参画白書・平成26年版・本編・2」の「第1部・第4章・第1節・
 7」そして「第2部・第4章・第1節」には、全国各自治体での「男性相談体制の確立に向
 けた取組み」が記されています。歴史的に見れば、各自治体での相談事業の対象は、殆ど
 「女性」が中心であったという事実があり、それは、男性の自殺の実態を考えれば、男性
 に対する人権軽視の施策であったと思いますし、同時に、(2)で述べたような、男性に対
 する「不当な性別観」が社会に存在し続けてきた証でもあると思いますが、白書に記され
 た取組みが、遅すぎた施策ではあるにしても、今後、困難を背負いながらひたすら一人で
 耐えることが責務であるかの如く苦しむ男性の、心の襞に分け入り、人生に希望を与える
 役割を果たすことを、願うばかりです。                      

  しかし、察するに、「男性相談体制の確立」は、自殺対策として必須の事項であるにして
 も、それだけでは「自殺者数の性差」は変わらないと思います。なぜなら、(2)で述べた
 ような「性別観・性別役割意識」が、様々の場面で男性を追い詰める役割を果たしている
 からです。総じて、或いは概括的に言って、女性は、「男性に守られる存在」「守られて当
 然の存在」として、社会の中に位置しています。つまり、男性は「女性を守らなければな
 らない存在」なのです。この認識によって、男女間に、人権上の配慮の不均衡を生じます。
 女性優遇・男性差別の出現です。例えば、細部に踏み込めば長くなりますから今回は要点
 だけを記しますが、今の日本の社会の、女性優遇・男性差別是認の象徴的存在として、「女
 性専用車両だけの存在」があります。「痴漢対策としての女性専用車両」は存在しても、「痴
 漢冤罪対策としての男性専用車両」は存在しないのです。ある男性駅員が言ったそうです。
 「女性は社会が守らなくちゃ。男は自分で自分を守らなくちゃ」。まさにこの発言ような不
 当な性別観が、男性に対する人権軽視を増幅させているのです。痴漢冤罪の問題について
 言えば、男性は自分の力だけで冤罪被害から身を守ることはできない。実際、周知のよう
 に、原田信助さんは、痴漢冤罪被害のために、新宿駅で自ら命を絶ったのです。    

  要するに、「性別観・性別役割意識」が、女性と男性に、異なる社会的な位置を与えてい
 るのです。「社会によって守られる存在としての女性」、そして「自分で自分を守らなけれ
 ばならない存在としての男性」。この位置関係が、社会の様々の場面で男性を追い詰め、そ
 の結果として、自殺者数の性差が、今後も現れ続けると思うのです。         

  ですから、自殺対策に関わる男性支援として重要なことは、全国各自治体での「男性相
 談体制の確立」だけではなく、前述のような「男性に対する性別観・性別役割意識」を取
 り払い、男性をストレスや危機場面から解放していくこと、或いは、その性別観・性別役
 割意識に対する支援を、「日常の中に」作り出すこと、そして、男性の人権を軽んじる風潮、
 男性差別を是正し、男性の幸福感・安心感を高めることだと思うのです。そしてそれは、
 法的基盤に目を向ければ、実は簡単なことのはずなのです。なぜなら、改めて言うまでも
 なく、日本国憲法第14条が「法の下の平等」を保障し、男女共同参画社会基本法第3条が
 「男女の人権の尊重」を謳い、その精神が、全国各自治体の男女共同参画関連条例に反映
 されているはずだからです。                           

  しかし現実は、その「法的基盤」のようになっていない。いやむしろ日本の社会は、男性
 に対する人権軽視・人権無視・男性差別を拡大させる方向に進んでいます。「かつて女性は
 差別されてきた」という言葉を旗印に、女性差別撤廃運動を展開するのは大変結構なこと
 です。女性差別はあってはならないのです。しかし現実には、今の日本は、男女平等実現を
 逸脱して、女性優先・女性優遇・女権拡大の方向へ進んでいる。男性の人権が蔑ろにされ、
 男性差別が拡大しているのです。それは、次に述べるような事実によって明らかなのです。

  男性差別拡大の流れは、大きくは三つあると思います。いや、実際は他にもありますが、
 今の私の認識の範囲で明言できる現象は三つある。その一つは、今回の要望書に詳細は書
 きませんが、「女性をターゲットとした企業の女性優遇戦略」。そしてもう一つが、前述の、
 公共交通機関での「女性専用車両だけの存在」。どちらも、日本の社会での「女性の特権階
 級化」を確実に進行させています。そしてもう一つが、他ならぬ「内閣府と全国の男女共
 同参画部局の施策」なのです。今まで、私の関心は、主に「災害対応・健康支援・ポジテ
 ィブ・アクション」にありましたが、その全てに、例えば次のような男性差別があるのです。

  「災害対応」につきましては、既に、内閣府や全国の男女共同参画部局・防災担当部局、
 更にその関連機関・団体等に、種々の要望書等を提出してきましたが、男性差別は非常に
 多く。男女共同参画社会基本法第3条との乖離を強く感じます。今回はその中から、二つ
 の例を取り上げます。一つは、被災者の「相談体制」そのものに関わる男性差別、もう一
 つは、被災者の生活支援に関わって、男性の人権を全く無視した施策の一例です。   

  「相談体制」に関わっては、内閣府男女局が、今年度も同名のままに継続してきた施策、
 「被災地における女性の悩み・暴力相談事業」の問題があります。この件につきましては、
 既に昨年、8月12日付で、男女局推進課宛に改善の要望書を提出しており、主張の詳細は
 そこにありますが、要するに、被災して苦しんできたのは女性だけではない。男性も苦し
 んできたのです。にもかかわらず、「男女の人権を尊重すべき男女局」が、男性を相談の対
 象から外したのです。それが問題なのです。男女局は、被災者の心の状態をよくご存じの
 はずです。男女局はそれを「白書」に書いたではありませんか。そしてその一つが、「関連
 資料」【表5】に記された「震災関連自殺者の75%が男性」という事実であり、加えて「男
 性の飲酒量増加」の問題も白書に記されてているではありませんか。また、DV被害も、
 女性だけに局限された現象ではない。それは例えば、推進課宛要望書に記した「横浜市・
 市民活力推進局・こども青少年局」の調査結果にも示されていますし、そのくらいのこと
 は、内閣府男女局であれば十分ご存じのはずでしょう。ならばなぜ「相談事業」の対象を
 「女性だけ」に限定したのですか。なぜ「男性」を相談の対象にしないのですか。それは、
 自殺の問題を含め、男性が抱えている困難を顧みない、深刻な男性差別ではありませんか。
 それは「男女共同参画社会基本法第3条」と乖離した施策ではありませんか。     

  もう一つ、被災地での生活支援に関わって、放置できない男性差別。それは、2013年
 5月に公開された「男女共同参画の視点からの防災復興の取組指針」の「解説事例集p.38
 ・取組み事例13・女性のニーズに寄り添った物資の支援」。その「宮城登米えがおねっと」
 の実践には「女性だけへの手厚い支援」が記され、男性への支援は存在しないのです。そ
 してそれに何のコメントもつけずに、あたかもそれが優れた典型実践であるかの如く掲載
 した内閣府男女局。もしも男女局が「女性支援センター」という名称であるならば、施策
 と名称の間に、とりあえずの整合性はあるでしょう。しかし実際には、男女局は、「男女の
 人権の尊重」を謳った「男女共同参画社会基本法第3条」に立脚しているはずなのです。
 その男女局が、なぜ男性の人権を無視するのですか。女性には、個人のサイズまで調べた
 新しい下着を配るのに、男性にはそういう配慮が全くない。それでは「男性は汚い下着の
 ままで暮らせ」と言っているのと同じではありませんか。どうしてそのような差別ができ
 るのですか。男性は、人間としての尊厳を全く無視されているではありませんか。それは
 まさに、「宮城登米えがおねっと」と「内閣府男女共同参画局」が、男性に対して「不当な
 性別観」を持っていることの証ではありませんか。                 

  第三次男女共同参画基本計画の「健康支援」も同じことです。この問題につきましては、
 厚生労働省のデータを添えて、別の要望書を作成する予定がありますが、要するに、第10
 分野「生涯を通じた女性の健康支援」に記された女性に対する手厚い配慮に比して、男性
 に対する支援が、あまりにも弱すぎるのです。現実には、男性は、明白な「性差」として
 の「短命」と、その背景としての「病に対する弱さ」、そして「自殺」の問題を抱えている。
 そういう、男性が抱えた現実を見つめる視座が、あまりにも脆弱すぎるのです。    

  ポジティブ・アクションも同様です。例えば、それを政治の表舞台に登場させた安部首相
 は、「国家公務員採用者女性割合を必ず30%まで引き上げる」と発言してきましたが、教
 育の機会均等、そして、国家公務員採用試験受験の機会平等が保障されている日本の社会
 にあって、更に、内閣府男女局が行ってきた「学校教育の場における地位の平等感調査(平
 成24年)」の「20〜29歳」のデータを見れば、そこには有意の男女差はないであろうと
 推測されます。つまり、システムとしても内実としても「男女平等」が確立したと判断さ
 れる学校教育の一つの到達点としての国家公務員採用試験の場で、数値目標30%達成のた
 めの女性優遇採用が行われれば、それはまさに、裁かれるべき不正入試と同じでしょう。

  更に、「関連資料」【表4】に示された「就職失敗による20代の自殺者の8割から9割を
 男性が占める」ことを考えるとき、それとポジティブ・アクションが無関係であると、言い
 切ることができるでしょうか。例えば、平等な選考ならば国家公務員に採用されたはずの
 男性が、男性であるという理由によって不採用となり、自殺をすることもあり得るでしょ
 うし。更に広く、「男性は家庭を支える経済力を持たなければならない」という性別観に囚
 われた男性が、実力主義に離反したポジティブ・アクションという名の男性差別によって就
 職活動に失敗し、自ら命を絶つ可能性は、十分あり得るのではないでしょうか。    

  女性優遇採用の行われた可能性は、既に、平成25年度大阪府・大阪市職員採用試験、そ
 して、平成26年度名古屋市職員採用試験でも指摘されています。それは、憲法第14条違
 反であるだけでなく、「性別役割意識」を考えれば、男性に対して、非常に強い精神的打撃
 を与える可能性を孕んでいます。このような不正採用に拍車をかけるポジティブ・アクシ
 ョンは、絶対に行わないよう、強く要望します。                  

  (3)の冒頭にも書きましたように、第三次男女共同参画基本計画の「第1部:基本的な
 方針」には、「男女共同参画社会の実現は、女性にとっても男性にとっても生きやすい社会
 を作ることであり、政府一体となって取り組むべき最重要課題である」とあります。しか
 し、内閣府男女局は、そして、全国の男女共同参画部局は、本当にこの精神に則って、施
 策を行っているのでしょうか。実際には、男性が抱えている性別役割意識、男性は女性を
 守らなければならない。女性を優先しなければならない。男性だからという理由で人権を
 軽んじられても、差別されても、我慢をしなければならない。」というような性別役割意識の
 上にアグラをかいて、「かつて女性は差別されてきた」という言葉を、粗雑に、乱雑に使い、
 「男女共同参画」という「美名」と乖離した「男性差別の施策」を行っているのではない
 でしょうか。だとすればそれは、美名で本質を隠した「自己本位のフェミニズム運動」、ま
 さに「裏切りの男女共同参画」ではありませんか。日本国憲法第14条の直下にあり、男女
 共同参画社会基本法第3条を擁する内閣府男女共同参画局、そして、その精神に則った条例
 を持つはずの全国の男女共同参画部局が、そういうことでよいのでしょうか ?     

(4)要望の要約 ・・・・・ 以上の認識をふまえ、次に、要望を要約します。

1.この要望書の末尾に【関連資料】として掲載した【表1】〜【表5】の数値から、男性の
 自殺の実態を再確認すること。自殺者数・自殺死亡率には、長期に渡って「明白な性差」
 が存在し、男性が、女性より深刻な状況に置かれ続けていることを再確認すること。  

2.「第三次男女共同参画基本計画」の「第1部:基本的な方針」に、「男女共同参画社会の
 実現は、女性にとっても男性にとっても生きやすい社会を作ること」とある。しかし実際
 には、上記1の事実から、男性は、より多くの「自殺につながる生きにくさ」を抱えてい
 ると考えられる。この現実を鑑み、自殺者全体を減らす取組みだけではなく、特に、男性
 の自殺を回避するための、積極的な改善措置を講ずること。             

3.「第三次男女共同参画基本計画・第2部・第3分野」の「成果目標」には、「自殺死亡率
 の減少」が掲げられているが、上記2の視点に立った「男性の自殺を減らすための改善目
 標」が記されていない。これを検討し、「第四次男女共同参画基本計画」に必ず加えること。

4.内閣府男女共同参画局は、現在、全国各自治体での男性相談体制の整備を進めている。
 それは、男性の自殺の実態を顧みれば、遅すぎた施策の感があるが、今後、男性が相談し
 やすい体制を整えると共に、困難の中で苦しむ男性の心の襞に分け入り、人生に希望を与
 える役割を果たすことを切に願う。                        

5.上記4のような相談体制の整備は、男性の自殺対策として必須のことと思われるが、そ
 れだけでは、恐らく、自殺の性差の問題は解決しない。なぜなら、長い間社会に存在し続
 けてきた「男性に対する性別観・性別役割意識」が、男性を追い詰める要素を孕みながら、
 今も、私たちの日常に深く根を張っているからである。例えば、「男性は強くなければなら
 ない。困難に耐えなければならない。孤独に耐えなければならない。弱音を吐いてはなら
 ない。」「男性は家庭を支える経済力を持たなければならない。家庭を守らなければならな
 い。」「男性は女性を守らなければならない。女性のために自分を犠牲にしなければならな
 い。男性だからという理由で人権を軽んじられても、差別されても、不満を言ってはなら
 ない。それが男らしさの規範なのだ・・・」というように・・・。
  内閣府男女共同参画局は、男女共同参画社会基本法第3条「男女の人権の尊重」に立脚
 しつつ、上記のような現実を再認識し、全ての施策を考えるに当たり、男性を追い詰める
 ことがないよう、また、男性に対して「人権軽視・人権無視・男性差別」を行うことがな
 いよう留意し、男性をストレスや危機場面から解放していくこと、そして、男性の幸福感
 ・安心感を高めること。また、この視点に立って、全国すべての男女共同参画部局に対し
 て、啓発メッセージを発すること。                        

6.上記5の視点から、「災害対応」「健康支援」「ポジティブ・アクション」について、具体
 的な要望を記す。                                

 @ 災害対応 ・・・・・ 平成25年3月に公開された「男女共同参画の視点からの防災・復興の
    取組指針(案)」は、意見募集の過程を経て、男性の人権にも配慮する方向で修正さ
    れ、同年5月に「同・指針」が公開された。しかし、その他の「災害対応」には、
    内閣府男女局の施策だけではなく、全国の男女共同参画部局の施策にも、非常に多
    くの「男性に対する人権無視・人権軽視」が存在し、「男女共同参画の視点」という
    言葉は、その本質と乖離して「女性優先・女性優遇・男性差別の視点」と同義に使
    われている。内閣府男女局の施策については、この実態を是正し、全国の男女共同
    参画部局に対しては、同様の視点で、是正のための啓発メッセージを発していただ
    きたい。また、この要望書の6枚目に取り上げた内閣府男女局の施策、「被災地にお
    ける女性の悩み・暴力相談事業」は、早急に「被災地における被災者の悩み・暴力
    相談事業」に修正していただきたい。

 A 健康支援(第三次男女共同参画基本計画)・・・・・ この件については、関係する厚生労働
    省のデータも添えて、再度、要望書を提出する計画があるが、第10分野「生涯を通
    じた女性の健康支援」に記された女性に対する手厚い配慮に比して、男性に対する
    支援があまりにも弱すぎる。明白な「性差」としての「男性の短命・病に対する弱
    さ・自殺」の問題をふまえ、「第四次男女共同参画基本計画」策定にあたっては、「男
    女共同参画社会基本法第3条」の視点に立って、修正をお願いしたい。

 B ポジティブ・アクション ・・・・・ 今回は、採用試験だけについて発言する。教育の機会
    均等、採用試験受験の機会平等が保障されている日本の社会にあって、更に、内閣
    府男女共同参画局が行った「学校教育の場における地位の平等感調査(平成24年)」
    の「20〜29歳」のデータから、学校教育に関しては、システムとしても内実とし
    ても「男女平等」が確立したと判断される。このような社会状況の中にあって、学
    校教育の一つの到達点としての採用試験の場で、女性優遇採用が行われるとすれば、
    それは裁かれるべき不正入試と同じである。それは、明白な、日本国憲法第14条違
    反であるだけではなく、「男性は家庭を背負わなければならない」という「性別役割
    意識」を担う男性に対して、非常に強い精神的打撃を与える。このような不正採用
    に拍車をかけるポジティブ・アクションは、絶対に行わないでいただきたい。  

7.再度引用する。「第三次男女共同参画基本計画・第1部:基本的な方針」に記された次の
 文章、「男女共同参画社会の実現は、女性にとっても男性にとっても生きやすい社会を作る
 ことであり、政府一体となって取り組むべき最重要課題である。」に、私は共感し、内閣府
 男女共同参画局に要望する。この「基本的な方針」の視点に立って「男性の自殺の実態」
 を直視し、「男性に対する支援の必要性」を再認識し、「全国での男性相談体制の整備」だけ
 ではなく、「第四次男女共同参画基本計画」の策定に向けて、更なる支援の方法を検討して
 いただきたい。                                   

関連資料                               

【表1】年間自殺者数の推移と男女比(1978〜2014年:37年間)          

   ・年間自殺者数が3万人以上であるか否かによって、37年間を三つの時期に区分し、
   各時期の年間自殺者数の幅を示した。                     
   ・男女比は、各年度の女性の自殺者数を1として、男性の自殺者数の割合を数値で 
   示した。表中の自殺率(自殺死亡率)は、人口10万人あたりの自殺者数を示す。  

                         (男女比)【男/女】      
     (年次)     (年間自殺者数)  (自殺者数) (自殺率)    
   1978年〜1997年  20,434 〜 25,524  1.6 〜 2.1 (1.7 〜 2.2)  
   1998年〜2011年  30,651 〜 34,427  2.2 〜 2.6 (2.3 〜 2.7)  
   2012年〜2014年  25,427 〜 27,858    2.2   (2.3 〜 2.4)  

【表2】原因・動機(大分類:7項目)別自殺者数と男女比(2008〜2014年:7年間)  

   ・7年間の年間自殺者数の幅を、原因・動機別にした。             
   ・表の数値には、「原因・動機不特定者数」は含まれていない。          

   (原因・動機)     (年間自殺者数)   (男女比)【男/女】     
    健康問題      12,920 〜15,867     1.3 〜 1.5       
    経済・生活問題    4,144 〜 8,377     8.1 〜 10.3        
    家庭問題       3,644 〜 4,547     1.6 〜 1.9       
    勤務問題       2,227 〜 2,689     6.9 〜 8.8        
    男女問題        875 〜 1,138     1.4 〜 1.8        
    学校問題        364 〜  429     2.6 〜 4.2       
    その他        1,351 〜 1,621     2.1 〜 2.7        

【表3】・・・・・(3月19日掲載の記事、「男性の自殺(5)」を参照のこと)

【表4】就職失敗による若者(20代)の自殺と男性の割合(2008〜2014年:7年間) 

      (年次)    (総数) (男性) (女性) (男性の割合)   
    2008年(H 20)   86    69     17     80.2 %       
    2009年(H 21)  122    98    24     80.3 %       
    2010年(H 22)  153   138    15     90.1 %       
    2011年(H 23)  141   119    22     84.3 %       
    2012年(H 24)  149   130    19     87.2 %       
    2013年(H 25)  104    95      9     91.3 %       
    2014年(H 26)  110    95    15     86.3 %       

【表5】東日本大震災に関連する自殺者数の男女別割合(H23年6月〜24年2月)

                      (女性)  (男性)  (計)   
 震災関連自殺者数(H23年6月〜24年2月) 24.6%  75.4%  100%   
 全国の自殺者数(平成23年)        31.6%  68.4%  100%   

posted by 翠流 at 23:13| Comment(0) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月24日

男性の自殺 (6) 2015年の状況

やや遅くなってしまったが、
内閣府自殺対策推進室が3月18日に発表した「平成27年中における自殺の状況」をもとに、
性差に着目した自殺データを、
昨年・一昨年と同様の形式で掲載する。
私は元号が嫌いなので、西暦で記すが、
2015年の自殺者総数は、24,025人、
年間3万人を割って4年目のデータとなるが、
男性の自殺が多いことに変わりはない。
性別の内訳は、男性16,681人、女性7,344人。
自殺者数の性比は、男性:女性 = 2.27:1。
人口10万人あたりの自殺者数が「自殺死亡率(自殺率)」であるが、
男性は早死傾向があるため、性別人口が女性より少なく、
自殺死亡率の性比を求めると、
下記の項目ーTに示したように、男性:女性 = 2.38:1 となる。
これが自殺の実態を、より正確に表している。

警察庁の分類に従って、
原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)を性別に見ると、
下記Vのように、その全てで男性の自殺が多く、
52の細分化項目では、Wに示すように、49項目で男性の自殺が多い。
概括的に言えば、傾向は昨年・一昨年と同じである。
数年前に警察庁発表のニュースとなった就活失敗による若者の自殺を20代で見れば、
Xに示すように、その92%を男性が占めている。

安倍晋三の「光り輝く女性」発言、「女性活躍推進法案」の陰で、
昨年も、たくさんの男性が、自ら命を絶っていった。
そういう男性の深刻な現実に、
日本の社会は光を当てない。
光のあたる「女たち」に比べれば・・・・・。

もしも自殺の性差が逆であったなら、
女性団体や男女共同参画部局は勿論のこと、
マスコミも、安倍晋三も、日本中が大騒ぎだろう。

山田昌弘さん(中央大学)の言葉のように(記事「自殺対策要望書」参照)、
「女性のつらさは問題にされるのに、男性の生きづらさは問題にされない」と言って、過言ではない。
男性の苦しみは、そして男性の命は、軽んじられているのである。

(追記) 内閣府の自殺対策推進室は、今年の3月をもって、全ての業務を厚生労働省に移管した。
   厚労省は、4月に自殺対策推進室を新設。        

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【 2015年 自殺データ 】 ・・・ 項目は次の通り。
      T.自殺者数と男女比
      U.自殺の「原因・動機特定者数」と「原因・動機不特定者数」
      V.原因・動機特定者の「原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)」と男女比
      W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52項目)」と男女比
      X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

T.自殺者数と男女比 : (  )内は自殺死亡率を示す。
       自殺死亡率(自殺率) ・・・ 人口10万人あたりの自殺者数。

       総 数        男        女      男女比【男/女】 
     24,025(18.9)  16,681(27.0)  7,344(11.3)   2.27(2.38)  

U.自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」 

     総 数       原因・動機特定者      原因・動機不特定者
     24,025      17,981(74.8%)       6,044(25.2%)  

V.原因・動機特定者の「原因・動機別の自殺者数(大分類:7項目)」と男女比。   
   ・・・ 遺書等の自殺を裏付ける資料により、明らかに推定できる原因・動機を、自殺
    者一人につき3つまで計上可能としているため、原因・動機特定者の原因・動機
    別自殺者数の和と、原因・動機特定者数(17,981)とは一致しない。    

    (原因・動機)  (計)  (男性) (女性)  【 男性 : 女性】
     家庭問題    3,641  2,327  1,314   【 1.77 : 1 】
     健康問題    12,145  7,122  5,023   【 1.41 : 1 】
     経済生活問題  4,082   3,658   424   【 8.62 : 1 】
     勤務問題    2,159   1,906   253   【 7.53 : 1 】
     男女問題      801    514   287   【 1.79 : 1 】
     学校問題      384    293   91   【 3.21 : 1 】
     その他     1,342    978   364   【 2.68 : 1 】

W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52小項目)」と男女比。

    ・下表の男女比は、自殺者の少ない方を1として示し、性差の大きい順に配列した。
    ・各項目が属する大項目は、表中の語尾に、次の略記号で示した。

     健康問題:A  経済生活問題:B  家庭問題:C  勤務問題:D
     男女問題:E  学校問題:F  その他:G          

 (順位)(原因・動機)       (男 女 比)    (人 数)
                   【男性 : 女性】  男性  女性  計
1 借金の取り立て苦:B       【 24.5 : 1 】   49   2  51
2 事業不振:B           【 20.9 : 1 】  440  21  461
3 倒産:B             【 17.0 : 1 】   34   2  36
4 負債(多重債務):B       【 14,8 : 1 】  625  42  667
5 自殺による保険金支給:B     【 13.0 : 1 】   65   5  70
6 犯罪発覚等:G          【 10.7 : 1 】  151  14  165
7 負債(その他):B        【 10.7 : 1 】  647  60  707
8 失業:B             【 10.6 : 1 】  330  31  361
9 仕事疲れ:D           【 9.7 : 1 】  612  63  675
10 仕事の失敗:D           【 9.4 : 1 】  351  37  388
11 職場環境の変化:D        【 8.8 : 1 】  247  28  275
12 就職失敗:B           【 8.5 : 1 】  206  24  230
13 負債(連帯保証債務):B     【 8.0 : 1 】   16   2  18
14 教師との人間関係:A       【 8.0 : 1 】   8   1   9
15 その他:D            【 7.6 : 1 】  331  43  359
16 生活苦:B            【 5.9 : 1 】 1,001  167 1,168
17 学業不振:F           【 5.0 : 1 】  101  20  121
18 職場の人間関係:D        【 4.4 : 1 】  365  82  447
19 子育ての悩み:C         【 1: 4.0 】   24  98  122
20 病気の悩み・影響(アルコ-ル依存症):A【 4.0 : 1 】  165  41  206
21 被虐待:C            【 4.0 : 1 】   4   1   5
22 その他:E            【 3.7 : 1 】   49  13  62
23 その他:B            【 3.6 : 1 】  245  68  313
24 その他:G            【 3.5 : 1 】  375  105  480
25 入試に関する悩み:F       【 3.2 : 1 】   23   7  30
26 その他進路に関する悩み:F    【 3.2 : 1 】   91  28  119
27 その他:F            【 3.0 : 1 】   42  14  56
28 夫婦関係の不和:C        【 2.8 : 1 】  697  247  944
29 家族からのしつけ・叱責:C    【 2.8 : 1 】   98  35  133
30 犯罪被害:G           【 1 : 2.5 】   4  10  14
31 失恋:E             【 2.3 : 1 】  202  85  287
32 近隣関係:G           【 2.0 : 1 】   39  19  59
33 孤独感:G            【 2.0 : 1 】  372  184  556
34 いじめ:F            【 1 : 2.0 】   1   2   3
35 病気の悩み(身体の病気):A   【 1.9 : 1 】2,601 1,309 3,910
36 その他:A            【 1.9 : 1 】  145  74  219
37 その他:C            【 1.9 : 1 】  213  112  325
38 家族の将来悲観:C        【 1.7 : 1 】  367  204  571
39 その他家族関係の不和:C     【 1.7 : 1 】  230  128  358
40 身体障害の悩み:A        【 1.7 : 1 】  168  94  262
41 後追い:G            【 1.6 : 1 】   37  32  69
42 その他交際をめぐる悩み:E    【 1.5 : 1 】  146  92  238
43 介護・看病疲れ:C        【 1.5 : 1 】  148  95  243
44 結婚をめぐる悩み:E       【 1.5 : 1 】   44  29  73
45 その他学友との不和:F      【 1.4 : 1 】   27  19  46
46 家族の死亡:C          【 1.3 : 1 】  292  209  501
47 親子関係の不和:C        【 1.3 : 1 】  254  185  439
48 病気の悩み・影響(薬物乱用):A  【 1.3 : 1 】   21  16  37
49 病気の悩み・影響(他の精神疾患):A【 1.2 : 1 】  742  571 1,313
50 病気の悩み・影響(統合失調症):A 【 1.2 : 1 】  613  505 1,118
51 病気の悩み・影響(うつ病):A   【 1.1 : 1 】 2,667 2.413 5,080
52 不倫の悩み:E           【 1.0 : 1 】   73  68  141

X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

       年次別      総数  男性  女性  男性の割合
      2008(H 20)   86   69   17   80.2 %
      2009(H 21)  122   98   24   80.3 %
      2010(H 22)  153  138  15   90.1 %
      2011(H 23)  141  119  22   84.3 %
      2012(H 24)  149  130  19   87.2 %
      2013(H 25)  104   95    9   91.3 %
      2014(H 26)  110   95   15   86.3 %
      2015(H 27)   88   81    7   92.0 %


posted by 翠流 at 00:37| Comment(2) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする