2019年01月17日

「男らしさハラスメント」で病んでいく男たち

年が明ける前、昨年の12月に、
ネット上に、印象深い記事があった。
題は「“男らしさハラスメント”で病んでいく男たち」。

この、「男らしさハラスメント」という言葉は、
近年にしては珍しく男性への配慮を携えながら、
男性差別拡大の要因の一つを、顕在化させていると思う。

女たちは既に、かつての性別役割から解放され、
国を挙げての女性優遇の下で、女性限定配慮の幸せを享受する時代になった。
しかし男たちは今もなお、古くからの「男らしさの規範」に呪縛され、
鬱屈した思いを抱えながら、不器用に生きているように見える。

そういう日本の社会にあって、
男たちを不遇から解放するために、
「男らしさ」という言葉が内包する「男性に対するハラスメント」と対峙し、
たどるべき方途を吟味しなければならないと思う。

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【記事名】 「“男らしさハラスメント”で病んでいく男たち」

【記事本文】
  女性たちは、女性であるがゆえの生きにくさを声高に訴えるようになった。一方、男
 性は、男性特有の苦労はあれど押し黙ったままだ。その置かれた窮状と声を上げられな
 い理由に迫る。

 ◆ 誰にも弱音を吐けずに病んでいく男たち……

  「変身願望に男も女もない」そんなセリフとともに『美少女戦士セーラームーン』の
 戦士に扮したりゅうちぇるが登場した、「モンスターストライク」のCMが放映され、
 「ジェンダーレスの象徴」として一躍話題になった。また、白岩玄の小説『たてがみを
 捨てたライオンたち』では、専業主夫になるか悩む男や、強さを求めて弱音を吐けない
 男など“男らしさ”に苦しむ男たちの姿が描かれ、多くの男性から共感を呼んでいる。

  メディアのなかだけではなく、

  「男は強くあれ。一家の大黒柱であれ」との価値観に息苦しさを感じる人々は決して
 少なくない。
  
  「『男であることは、しんどい』。そんな言葉は、なかなか飲み会でも気軽に吐けな
 いです」と、苦笑いするのが大手通信会社に勤める田中正雄さん(仮名・46歳)だ。

  「昔から競争が苦手で、『出世にさほど興味はない』と同僚に呟けば、『男なのにそ
 れで終わっていいのか?』『ビジョンがない』と馬鹿にされる。腹は立ちますが言い返
 せないジレンマもあります」

  こうした悲鳴を上げるのは、決して田中さんだけではない。

  「子供が熱を出したときに、会社を早引けして僕が迎えに行ったら、『嫁に行かせれ
 ばいいのに。男のくせに妻が怖いのか』と同僚からの陰口が」(43歳・食品)とパタニ
 ティハラスメント(父性の侵害)を受けることもあれば、「出世コースを外れてはや数
 年。部下から『給料泥棒』『あのオッサンは使えない』と陰口がひどい。お局にはみん
 な気を使うのに、なぜ出世してない男は冷遇されるのか」(39歳・流通)と逆パワハラ
 に悩むケースも。

  それに対して「いかに多様性が叫ばれても、職場で男らしさを尊ぶ姿勢はまだ残る」
 と語るのは、人材育成企業代表の前川孝雄氏。

  「人手不足で仕事は増えているのに、社会保障費や税金負担の倍増で手取り給料は上
 がらない。多くの人が働く意欲を失うのは当然なのに、職場ではいまだ男性は家庭より
 仕事優先で、アグレッシブに働くべきとの風潮が強い。男性が育休を取ったり、出世に
 意欲的でないと『やる気がない』と評価を下げる企業もまだ多いです」

  問題が起こるのは家庭も同様だ。

  「『最近の男性はもっと家事に参加するものだ』と妻に言われ、帰宅後に洗い物をす
 れば『やり方が違う』と怒鳴られる。これは家事ハラでは」(43歳・IT)

  「会社の業績が悪化し、給料が激減。いまや上場企業で働く妻のほうが高年収で、家
 に帰れば『男のくせに稼ぎが悪い』となじられる。それでも、以前同様、家賃や外食費
 は全部僕持ち。文句を言ったら『男が出すのは当たり前。私が稼いだお金は私のもの』
 とキレられました。そこも男女平等では?」(45歳・SE)

 ◆ 世界一女性より不幸な日本の男性の実態

  会社でも家庭でも「男らしさ」を押しつけられたハラスメントに遭い、疲弊する男た
 ち。そんな日本の男性の「生きづらさ」は、データにも。男女の格差を表す「ジェンダ
 ーギャップ指数【下記★1】」によれば、’17年の時点で日本は世界144か国中114位。
 男性は女性より経済面や教育面などで圧倒的に優遇されている。だが、’14年に発表さ
 れた「世界価値観調査【下記★2】」によれば、日本は男性より女性の幸福度が上回り、
 男女の間の幸福度に世界一ギャップがある。つまり、恵まれているのに、幸福感を感じ
 られない男性が多いのだ。【下記★3】

    【★1】 ジェンダーギャップ指数(2017年)・・・私(翠流)は、この指数が、
       吟味不十分のままに「錦の御旗」の如く拡散している今の日本の状況に、
       強い危惧を感じている。

        1位:アイスランド  2位:ノルウェー   3位:フィンランド
        4位:ルワンダ    5位:スウェーデン ・・・・・(中略)・・・・・
        100位:中国    114位:日本    118位:韓国

    【★2】 幸福度格差(2014年)・・・「女性の幸福度」から「男性の幸福度」を
                    引いた数値:世界価値観調査(2014)
        1位:日本      2位:ヨルダン     3位:パレスチナ
        4位:リビア     5位:ジョージア    6位:韓国
        7位:シンガポール  8位:ニュージーランド 9位:エジプト
        10位:アルジェリア

    【★3】 この部分については、ある人が、次のようなコメントを投稿していた。
       それをを支持する意味で、ここに掲載する。

       >(上記該当部分):日本は男性より女性の幸福度が上回り、男女の間の
        幸福度に世界一ギャップがある。つまり、恵まれているのに、幸福感を
        感じられない男性が多いのだ。

      (コメント):逆でしょう。幸福感を感じられない男性が多いということは、
        恵まれてないということだよ。

  なぜこうも、生きづらさを感じる男性が多いのか。産業医である海原純子氏はこう分
 析する。

  「年功序列や終身雇用が崩壊した現代では、仕事に打ち込んでも収入は上がらない。
 共働きも多いので、以前のように一家の戸主としての威厳が保てません。でも、いまさ
 ら家庭人にもなりきれない。その中間で悩み、アイデンティティが崩壊する人が増えて
 います」

  教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏もこう指摘する。

  「取り巻く環境が変化しているのに、依然として男性は“男らしさ”を求められがち。
 特に家庭では、従来の男らしさに加えて、新たに女性の社会進出への理解や家事や育児
 の能力も求められる。非常に負担の多い状況です」

 ◆ 男らしさを失うことは「負け」ではない

  ダイバーシティが叫ばれ、女性らしさからの解放が進んだ’18年は、「#Metoo運
 動」を発端に男性から女性へのセクハラが暴露され、性の不平等が告発された。マッチ
 ョな男性像が否定される一方、なぜ男性らしさからの解放は進まないのか。

  これに対しておおた氏は、「経済力や強さなど、もともと男性のほうが持っているも
 のが多いからでしょう。『女性らしさの解放=権利の獲得』とポジティブな印象がある
 のに対し、『男性らしさの解放=何かを失う』とネガティブな印象が強い。だから手放
 せないんです」と続ける。

  実際、「毎日が辛いが、弱音を吐いたら『負け』だと思っている」(47歳・医療)な
 ど自分一人で不安を抱え込む男性も多い様子。

  「男性は『何事も黙って耐える』ことを美徳とするせいか、辛くてもギリギリまでた
 め込んでしまう。結果、うつ病や隠れアルコール依存症を発症する人も増えています」
 と海原氏は警鐘を鳴らす。だが一方で、変化も生まれつつある。

  「ここ最近、40代男性を中心に、ストレスチェックなどを通じて『疲れた』『心が辛
 い』と声を上げる人が増えてきました。事態の深刻さの表れではあるものの、多くの声
 が上がるほど社会も少しずつ変化していくはず」(海原氏)

 「男という性」から外れることは、決して負けではないのだ。
                            <取材・文/藤村はるな>

※ 脚注

 【前川孝雄】 
  FeelWorks代表取締役。400社以上で「人が育つ現場」創りを支援。青山学院大学
  兼任講師。著書に『一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など。
 【海原純子】
  心療内科医。日本医科大学特任教授。日本生活習慣病予防協会理事。
  著書に『男はなぜこんなに苦しいのか』(朝日新書)など。歌手としても活動する。
 【おおたとしまさ】
  教育ジャーナリスト。男性の育児や、子育て夫婦のパートナーシップ、受験など幅広
  いジャンルで活躍。近著に『中学受験「必笑法」』(中公新書ラクレ)など。


posted by 翠流 at 01:31| Comment(0) | 人権擁護への思い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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