2017年12月31日

男性の自殺(7) 2016年の状況

実はもう、半年ほど前のことになるが、
自殺絡みの報道に関わって、
男性の危機に目を向けた女性の文章(後述)に出会った。
それは、私にしてみれば、はなはだ珍しいことなのであって、
自殺対策に限らず、「初めに女性優遇の結論ありき」の風潮が、
日々強まる日本の社会にあって、
男性の危機や人権に関わる配慮など、皆無と言っても過言ではないような女に、
出会うことが多くなってしまった。
誠実な女性には、大変失礼な発言にはなるが、
社会の上層部を含め、今の日本の多くの女性たちは、
女性解放・女性優遇が拡大する社会の中で、その自己中心性までもを、
無分別に解放してしまったかのようで、
彼女たちは、ただひたすら自分たちを、
弱者、被害者、配慮されるべき存在、特権階級とすることを好み、
女性優先・女性限定の利益誘導を企図、或いはそれを当然の如く主張するか、
或いはまた、そこまで悪辣ではなくても、
女性優遇を単純に喜ぶだけの存在であると、
私は、捉えるようになってしまった。
その背景となった具体的な事実については、
既にこのブログに書いてきた通りである。

時には、このような風潮を憂慮する女性に出会うことも、稀にはあるが、
彼女たちの疑義は、ひと時の呟きでしかないように、
今の日本を席捲する自己本位のフェミニズム運動の奔流の中に消えてゆく。
法に謳われていることが明白なはずの、人権尊重の平等の理念は、
例えば、巧みに仕組まれた、名ばかりの男女共同参画運動の中で、
既に指摘してきたように歪曲され、
「いのち」への支援であるにしろ、災害対応であるにしろ、
男性の人権への配慮は、著しく、なおざりにされてきた。
施策決定の過程に関わった男たちは、
恐らくは、このような問題点を指摘しなかっただろう。
すれば「男らしさの規範」に反するという自己規制があるだろうし、
女たちに嫌われたくないという、保身もあるだろうし、
目の前の現実を認識できない見識不足の男たちや、
自分の鈍感さを男性の感受性として不当に一般化した男たちもいただろう。

男たちの中には、客観的事実としての男性の不利益を、仮に認識した場合でも、
それを不利益と言わずして女性への配慮を優先させなければならないと、
そういう性別観を、男性に対して強要する人物は多い。
それが、男性差別を、社会の中に、温存、増幅させている。
もしも、そういう男たちの性別観を批判する女性が増えれば、
男たちも変わるかもしれないと私は思うが、
それはまた・・・・・夢のまた夢・・・・・・?

自殺対策も同じことだろう。
2016年の自殺も、例年の如く、明らかに男性に多くなった。(注1)
   (注1)データの詳細は後半に掲載するが、自殺率は男性が女性の 2.3倍となっている。
もしもこの性差が、男女逆であったなら、
日本中が、女性を守れと大騒ぎになっているだろうと、
私は、そういう意味の文章を、以前、記事の中に書いたことがある。
男らしさの規範が、自殺対策にも影を落とし、
男性の自殺の実態を国民に知らせる情報発信や、
男性が置かれている状況への、自殺対策としての配慮が、
現実と乖離して弱いのである。

過日私は、ある自殺絡みの講演を聞いた。
その講師となった男、某自治体の自殺対策の責任者の医学博士の男は、
もっともらしい顔をして、女性の自殺の一部を取り上げ、それを強調し、
会場の女性は、頷くように、それを聞いていた。
しかしその医学博士の男が、
男性の自殺の実態を、「男性は・・・」という表現で語ることは、
ただの一度もなかったのである。
私が、事前に、次のデータを添えて、
自殺の性差に関わる質問5項目(略)を、
彼に提出しておいたにも関わらずである。

 ◆ 自殺者数・自殺率の年次変化と男女比 (昭和53年〜平成28年:39年間)
 ◆ 自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」 (平成53年〜28年)
 ◆ 原因・動機(7項目)別データと男女比 (平成20年〜28年)
    ・9年間の概括的特徴と男女比
    ・9年間の年次別データと男女比
 ◆ 原因・動機(52項目)別データと男女比
    ・就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合(平成20年〜28年)
    ・年次別・原因動機(52項目)別データと男女比(平成25年〜28年)

その後、数週間たって、あるグループの中で、その講演のことが話題になった。
二人の女性は、それを「いいお話だった」と言った。
私は、その講師を務めた医学博士の男を、「普通の男だ」と言った。
普通の男は、男性の危機を、危機通り表現しない。
表現する場合でも、それは抑制的であって、
現実と乖離するのである。

この文章の冒頭で私は、
珍しく、男性の危機に目を向けた女性の文章に出会った、と書いた。
その女性は、「河合 薫」さんである。
記事の題名とURLは、下に記す。
私は、現実を踏まえて発言してくださった河合さんに、感謝申し上げる。
記事は、全文を読むにはログインが必要である。
お読みいただける方には、各自でログインをお願いしたいと思う。

【河合薫さんの記事】
  「白書もスルー? 40、50代男性の自殺率の高さ」 
       幸福度は内乱国並み、男の幸せはどこにある (日経ONLINE)
                   2017年6月6日(火)掲載 
   http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/060200107/

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆ 続いて、今年3月に公表された自殺データ(2016年の状況)をもとに、例年通り整理
 した結果を掲載する。ご覧いただければおわかりのように、概括的傾向に変化はなく、
 性差の問題は改善されていない。なお、今回は、下記の項目Wの冒頭に、52項目の4年間
 の性差を、数値として掲載した。

【 2016年 自殺データ 】 ・・・ 項目は次の通り。
      T.自殺者数と男女比
      U.自殺の「原因・動機特定者数」と「原因・動機不特定者数」
      V.原因・動機特定者の「原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)」と男女比
      W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52項目)」と男女比
      X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

T.自殺者数と男女比:(  )内は自殺死亡率(自殺率)を示す。
           自殺率は人口10万人あたりの自殺者数を意味する・
     総 数        男        女     男女比【男/女】
   21,897(17.3)  15,121(24.5)  6,776(10.4)  2.23(2.35)

U.自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」 
     総 数     原因・動機特定者     原因・動機不特定者
     21,897     16,297(74.4%)     5,600(25.6%)

V.原因・動機特定者の「原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)」と男女比。
  ・・・ 遺書等の、自殺を裏付ける資料により、明らかに推定できる原因・動機を、自殺者
   一人につき3つまで計上可能としているため、原因・動機特定者の、原因・動機別自
   殺者数の和と、原因・動機特定者数(17,981)とは一致しない。

    (原因・動機)  (計)  (男性) (女性) 【男性 : 女性】
     家庭問題     3,337  2,111  1,226  【1.72 :1】
     健康問題    11,014  6,427  4,587  【1.40 :1】
     経済生活問題   3,522  3,113   409  【7.61 :1】
     勤務問題     1,978  1,759   219  【8.03 :1】
     男女問題     764   522    242  【2.15 :1】
     学校問題     319   244    75  【3.25 :1】
     その他      1,148   819    329  【2.48 :1】

W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52小項目)」と男女比。

   ・下記【表A】の男女比は、少ない方を1として示してある。
   ・各項目が属する大項目は、表中の語尾に次の略記号で示した。
       健康問題:A  経済生活問題:B  家庭問題:C  勤務問題:D
       男女問題:E  学校問題:F    その他:G
   ・下記【表@】は、平成25年以降4年間の性差を、項目数の差として示した。

  【表@】                H25   H26  H27  H28
     男性の自殺が女性より多い項目   49    51   49   49
     女性の自殺が男性より多い項目    2    1    3    2
     男女同数の項目           1    0    0    1
        計             52   52   52   52
  【表A】
    (順位)(原因・動機)      (男 女 比)    (人 数)
                     【男性:女性】  男性  女性   計
    1 負債(連帯保証債務):B     【  ー  】   17   0   17
    2 失業:B             【14.0:1】  294   21  315
    3 負債(多重債務):B       【13.0:1】  561   43  604
    4 その他:D            【11.6:1】  269   23  292
    5 事業不振:B           【11.6:1】  337   29  336
    6 負債(その他):B        【10.0:1】  535   53  588
    7 仕事疲れ:D           【9.2:1】  534   58  592
    8 職場環境の変化:D        【8.8:1】  221   25  246
    9 自殺による保険金支給:B     【8.7:1】   35   4   39
   10 倒産:B             【8.6:1】   26   3   29
   11 借金の取り立て苦:B       【8.2:1】   33   4   37
   12 仕事の失敗:D          【8.2:1】  329   40  369
   13 犯罪発覚等:G          【7.6:1】  138   18  156
   14 就職失敗:B           【6.2:1】  175   28  203
   15 子育ての悩み:C         【1:6.2】   14   87  101
   16 学業不振:F           【6.1:1】   99   16  115
   17 職場の人間関係:D        【5.5:1】  406   73  479
   18 その他:B            【4.9:1】  251   51  302
   19 生活苦:B            【4.9:1】  849  173  1,022
   20 入試に関する悩み:F       【4.8:1】   24   5   29
   21 病気の悩み・影響(アルコ-ル依存症):A【4.0:1】  141   35  176
   22 その他:E            【3.8:1】   57   15   72
   23 結婚をめぐる悩み:E       【3.6:1】   47   13   60
   24 その他進路に関する悩み:F    【3.4:1】   76   22   98
   25 近隣関係:G           【3.2:1】   39   12   51
   26 夫婦関係の不和:C        【3.1:1】  636  200  836
   27 その他:G            【3.1:1】  326  103  429
   28 失恋:E             【2.5:1】  187  73  260
   29 家族からのしつけ・叱責:C    【2.4:1】   76   31  107
   30 その他:A            【2.1:1】  182   84  266
   31 病気の悩み(身体の病気):A   【2.0:1】 2,315 1,112 3,427
   32 いじめ:F            【2.0:1】   6   3   9
   33 教師との人間関係:A       【  ー 】   2   0   2
   34 その他交際をめぐる悩み:E    【1.8:1】  155   82  237
   35 その他:C            【1.7:1】  207  116  323
   36 家族の将来悲観:C        【1.7:1】  335  188  523
   37 病気の悩み・影響(薬物乱用):A  【1.7:1】   21   12   33
   38 孤独感:G            【1.7:1】  285  163  448
   39 身体障害の悩み:A        【1.6:1】  164  100  264
   40 その他:F            【1.5:1】   22   14  36
   41 その他家族関係の不和:C     【1.5:1】  207  135  342
   42 介護・看病疲れ:C        【1.5:1】  151  100  251
   43 犯罪被害:G           【1.5:1】   3   2   5
   44 家族の死亡:C          【1.3:1】  253  189  442
   45 病気の悩み・影響(他の精神疾患):A【1.3:1】  738  566  1,304
   46 親子関係の不和:C        【1.2:1】  232  179  411
   47 不倫の悩み:E          【1.2:1】   76   59   135
   48 後追い:G            【1:1.1】   28   31   59
   49 病気の悩み・影響(うつ病):A   【1.0:1】 2,330 2,166  4,496
   50 病気の悩み・影響(統合失調症):A 【1.0:1】  536  512  1,048
   51 被虐待:C            【  ー  】   0   1   1
   52 その他学友との不和:F      【1 : 1】   15   15   30


X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

        年次別     総数  男性   女性   男性の割合
      2008(H 20)   86   69   17    80.2 %
      2009(H 21)  122   98   24    80.3 %
      2010(H 22)  153   138   15    90.1 %
      2011(H 23)  141   119   22    84.3 %
      2012(H 24)  149   130   19    87.2 %
      2013(H 25)  104   95    9    91.3 %
      2014(H 26)  110   95   15    86.3 %
      2015(H 27)   88   81    7    92.0 %
      2016(H 28)   80   64   16    80.0 %


posted by 翠流 at 23:33| Comment(0) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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