2015年03月19日

男性の自殺 (5) 2014年の状況

内閣府の自殺対策推進室が、
3月12日付で、2014年の「自殺の統計」を公開した。
カーラジオを聞いていたら、このニュースが流れ、
NHKの女性キャスターが、
「自殺者数が 6.8%減った」と言った。
減ったのはたいへん結構な話しなのであるが、
彼女は、自殺の性差の問題には、全く触れなかった。
因みに、この年の自殺死亡率(自殺率)は、男性が女性の 2.28倍であった。
記事「男性の自殺(2)」に示されているように、
1993年以降の21年間、男性の自殺死亡率は、毎年常に女性の2倍を超えている。

以前、記事として取り上げたことのある、某市の自殺予防フォーラムもそうであった。
自殺の性差に触れる説明は、
フォーラムの間中、皆無だったのである。
このようなスタンスについて、私は、
記事「男性の自殺(1)」の中で、次のように表現している。

    自殺の性差が、もしも逆であったなら、
    日本中が大騒ぎになっているような気がする。
    女性団体も、社会の上層部の男たちも、男女共同参画も、
    その現実を放置しないだろう。
    保護を求める女性たち、保護を受け入れられる女性たち、
    しかし保護を求めることができずに、
    男性であることを背負い、
    孤独のうちに死んでいく男たちがいる。

男性の危機は、その現実と乖離して、抑制的に表現される。
その背景には、恐らく、
危機に耐えるべき存在としての、男性に対する性別役割の、
同調圧力的な強要があるだろう。
自殺の性差がいつになっても変わらない最大の原因は、
恐らくは、そこにあると私は思う。

ところで、上述の自殺予防フォーラムを企画した某市が、
以前作った自殺予防のポスターには、
中央に、悩む女性のイラストだけが描かれていた。
面白いものである。
自殺で死ぬのは、男性が女性より明らかに多いのに、
苦しむのは女性であるかのように、
ポスターは描かれる。
辛さに涙するのが女性であれば、そこには、
高い非共感力によって、社会から愛を得られる女性の姿がある。

私は、そのポスターの、現実との乖離に耐えられず、
フォーラムよりだいぶ前に、
某市の、担当部局に苦情の電話を入れていた。

その私の行動とは全く無関係の、偶然の所産であろうが、
フォーラムの会場に掲示されていた新しいポスターには、
青い背景の中に、絡み合った多数の臙脂色の歯車が、
人の心をかたどるように描かれていた。
そのポスターに、性別表現はない。
私は、そのポスターに感動した。
自殺に向かう人は、
性別による偏向を捨象した施策、
危機の現実と乖離しない支援によって、
救われなければならない。

2014年の自殺データは、下記の通り。
昨年の記事「男性の自殺(4)」と同様に整理した。

【項目】T.自殺者数と男女比                         
    U.自殺の「原因・動機特定者数」と「原因・動機不特定者数」      
    V.原因・動機特定者の「原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)」と男女比
    W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52項目)」と男女比  
    X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合         

◆ なお、近日中に、内閣府男女共同参画局に「自殺対策要望書」を送る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【 2014年 自殺データ 】

T.自殺者数と男女比 ・・・ 自殺死亡率(自殺率)は、人口10万人あたりの自殺者数を示す。
                          男女比【男/女】
      総 数    男       女    自殺者数(自殺死亡率)
      25,427    17,386    8,041     2.16(2.28)
          
U.自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」

      総 数   原因・動機特定者     原因・動機不特定者
      25,427    19,025(74.8%)     6,402(25.2%)

V.原因・動機特定者の「原因・動機別の自殺者数(大分類:7項目)」と男女比。   

     (原因・動機)  (計) (男性) (女性) 【 男性 : 女性】  
      家庭問題    3,644  2,227  1,417  【 1.57 : 1 】  
      健康問題    12,920  7,418  5,502  【 1.34 : 1 】  
      経済生活問題  4,144  3,688   456  【 8.08 : 1 】  
      勤務問題    2,227  1,988   239  【 8.31 : 1 】  
      男女問題      875   555   320  【 1.73 : 1 】  
      学校問題     372   300    72  【 4.16 : 1 】  
      その他     1,351   961   390  【 2.46 : 1 】  

   (注意) 遺書等の自殺を裏付ける資料により、明らかに推定できる原因・動機を、
     自殺者一人につき3つまで計上可能としているため、原因・動機特定者の原因
     ・動機別自殺者数の和と、原因・動機特定者数(19,025)とは一致しない。

W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52小項目)」と男女比。

 ◆ 下表の男女比は、少ない方を1として示してある。
  男性の自殺は、52項目中 51項目で女性を上回っている。
  各項目が属する大項目は、表中の語尾に、次の略記号で示した。

      健康問題:A  経済生活問題:B  家庭問題:C  勤務問題:D
      男女問題:E  学校問題:F    その他:G

(順位)(原因・動機)         (男 女 比)     (人 数)
                  【 男性 : 女性 】  男性  女性  計
1 負債(連帯保証債務):B      【 25.0 : 1 】   25    1  26
2 負債(多重債務):B        【 16,8 : 1 】  639   38  677 
3 仕事の失敗:            【 13.4 : 1 】  376   28  404 
4 借金の取り立て苦:B        【 13.3 : 1 】   53   4   57  
5 事業不振:B            【 12.8 : 1 】  486   38  524  
6 負債(その他):B         【 11.2 : 1 】  639   57  696  
7 職場環境の変化:D         【 10.9 : 1 】  251   23  274 
8 仕事疲れ:D            【 10.0 : 1 】  623   62  685 
9 倒産:B              【 9.7 : 1 】   29   3   32  
10 自殺による保険金支給:B     【 9.3 : 1 】   74   8   82  
11 失業:B             【 8.9 : 1 】  337   38  367  
12 就職失敗:B           【 8.3 : 1 】  232   28  260  
13 その他:D            【 8.2 : 1 】  320   39  359  
14 犯罪発覚:G           【 7.7 : 1 】  153   20  173  
15 子育ての悩み:C         【 1: 5.9 】   19  112  131  
16 学業不振:F           【 5.7 : 1 】  102   18  120  
17 生活苦:B            【 5.1 : 1 】  916  178 1,094  
18 入試に関する悩み:F       【 5.0 : 1 】   20   4   24  
19 病気の悩み・影響(アルコ-ル依存症):A 【 4.9 : 1 】  156   32  188  
20 職場の人間関係:D        【 4.8 : 1 】  418   87  505  
21 そのほかの進路に関する悩み:F  【 4.2 : 1 】  106   25  131  
22 その他:B            【 3.6 : 1 】  258   71  329  
23 教師との人間関係:F       【 3.5 : 1 】   7   2   9 
24 その他:F            【 3.3 : 1 】   33   10   43 
25 いじめ:F            【 3.0 : ー 】   3   0   3 
26 その他:G            【 2.7 : 1 】  372  136  508  
27 夫婦関係の不和:C        【 2.6 : 1 】  637  247  884  
28 失恋:E             【 2.5 : 1 】  198   78  276  
29 犯罪被害:G           【 2.5 : 1 】   5   2   7  
30 家族からのしつけ・叱責:C    【 2.4 : 1 】  104   44  148  
31 そのほかの学友との不和:F    【 2.2 : 1 】   29   13   42 
32 その他:E            【 2.2 : 1 】   46   21   67 
33 近隣関係:G           【 2.1 : 1 】   47   22   69 
34 身体障害の悩み:A        【 2.1 : 1 】  211   99  310  
35 被虐待:C            【 2.0 : ー 】   2   0   2 
36 病気の悩み・影響(薬物乱用):A  【 2.0 : 1 】   42   21   63 
37 病気の悩み(身体の病気):A    【 2.0 : 1 】 2,724 1,395 4,119
38 孤独感:G            【 1.9 : 1 】  328  174  502  
39 家族の将来悲観:C        【 1.6 : 1 】  330  207  537  
40 後追い:G            【 1.6 : 1 】   56   36   92 
41 そのほかの家族関係の不和:C   【 1.5 : 1 】  228  150  378  
42 そのほかの交際をめぐる悩み:E  【 1.5 : 1 】  184  122  306  
43 家族の死亡:C          【 1.5 : 1 】  314  215  529  
44 その他:C            【 1.5 : 1 】  196  135  331  
45 親子関係の不和:C        【 1.3 : 1 】  261  197  458  
46 不倫の悩み:E          【 1.3 : 1 】   92   71  163 
47 その他:A            【 1.3 : 1 】  150  118  268  
48 結婚をめぐる悩み:E       【 1.3 : 1 】   35   28   63 
49 介護・看病疲れ:C        【 1.2 : 1 】  136  110  246  
50 病気の悩み・影響(他の精神疾患):A【 1.2 : 1 】  711  596 1,307  
51 病気の悩み・影響(統合失調症):A 【 1.1 : 1 】  635  591 1,226  
52 病気の悩み・影響(うつ病):A   【 1.1 : 1 】 2,789 2.650 5,439  


X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

       年次別    総数  男性  女性  男性の割合     
      2008(H 20)   86   69    17   80.2 %      
      2009(H 21)  122   98    24   80.3 %      
      2010(H 22)  153  138    15   90.1 %      
      2011(H 23)  141  119    22   84.3 %      
      2012(H 24)  149  130    19   87.2 %      
      2013(H 25)  104   95    9   91.3 %      
      2014(H 26)  110   95    15   86.3 %


    
posted by 翠流 at 21:49| Comment(2) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
翠流様はじめまして・・・ではないですね(^_^;)『社会の荒廃』から来ました流れ者です。

そちらの記事で翠流様のコメントを拝読しました。仰る通り、少子化対策に限らず、貧困や未婚率や天災など、性別に関係のない事柄であろうと、支援は全て女様優先で男性は蔑ろにされています。

「女性の非正規雇用ガー!貧困ガー!」

コレ、男性にも言える事ですよね。基本的に結婚→子作りなのですから、結婚の条件に『年収』を見られる男性の非正規・貧困の方が、ずっと深刻なのに。まぁそもそも、男女平等を当然としているこの平成の世で、未だに男性の価値を『収入』で計る事が大きな間違いなのですが。これこそ女様の大嫌いな『時代錯誤の古き悪しき価値観』の押し付けなのに、何故かこれは見過ごされるんですよね(呆)

「私の気が向いたら子供を産む。周りは私の意思を受け容れろ!子供の立場?知らんね」と、自らの役目を放棄し、好き勝手やっている癖に、男性には各種の『義務』を押し付け、満たせない者を『ダメ男』と罵倒するダブスタ・・・一体何様?

真の弱者は、「劣等種」と罵倒されロクな支援もされず、同じ生物としてすら扱われない『貧困男性』です。妊婦が10年間で60人ちょっと自殺しただけで「支援しろ!」保育所が足りないだけで「日本死ね!」と騒ぎ立てる癖に、年間万単位で自殺している男性をどうするかは論じられない。されても相談窓口の設置などで終わりです。

性犯罪に遭った女性には「多くの子が言えないで泣き寝入りしてる。非親告罪化・厳罰化を!」と気遣い心中を代弁し、フェミ男よろしく正義の味方を気取って、対策を講じるよう働きかけ、国の重い腰を上げさせようと躍起になるのに、一人で苦悩した末に命を絶つ男性達はほったらかしも同然。決して弱者として扱われません。

女様なら、たとえ嘘を吐いて犯罪をでっち上げても「女の子は繊細。ショックで事実と異なる証言をしてもしょうがない!」と無理にでも擁護する癖に、自殺者の殆どが男性という現状には冷やかで「男性は繊細だから保護すべき!」とは絶対にならない。寧ろ、こうした気の毒な男性を「男の癖に情けないw」と罵倒・嘲笑する輩まで居る始末。

女様は男性が弱者になる事を決して許しはしません。だって既得権益ですもの。お姫様扱いされたいんですもの。平等だと楽が出来ないじゃない!寄生出来ないじゃない!←そりゃあやめる訳が無いわな┐(´-`)┌

『馬車馬のように働き、私の盾になって死ね!』『従わない奴は人間失格!』『リソースが無い奴は失せろ!』要約するとこういう事でしょ?男性の扱いは家畜のそれと大差ない・・・お〜い酷連さ〜ん!日本には男性を人として扱わない、男性蔑視・人権軽視の思想がはびこってますよ!それを是とする団体が幅を利かせてますよぉ!
Posted by 流れ者 at 2016年05月15日 11:06
「流れ者」さん、来訪ありがとうございます。
共感的なコメント、鋭いコメントに感謝です。
ところで、流れ者さんは、ブログはしていないのですか?
立ち上げれば、きっと素晴らしいブログになると思うのですが・・・・・。
わたくし、また「蜻蛉の眼鏡」に遊びに行きます。
これからもよろしくお願い致します。
Posted by 翠流 at 2016年05月16日 00:48
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