2014年07月03日

男性の自殺(4) 2013年の状況と、就職失敗による若者の自殺

◆ 警察庁生活安全局生活安全企画課のデ−タに基づく「平成25年中の自殺の状況(H26.3.13)」が、内閣府自殺対策推進室のHPに掲載されている。今回は、まずそれを、今までの記事と同じ観点で整理し(下記 T・U・V)、続いて、Vで7項目に分類された「原因・動機」を、更に52の小項目に分類したデ−タを、特に男女比に着目して掲載する(下記 W)。また、小項目の中から、特に、「就職失敗による自殺」を、20代の若者について取り上げ、H20年からH25年までの6年間のデ−タを掲載する(下記X)。Xについては、昨年の春、警察発表のニュ−ス「就活失敗し自殺する若者急増」として報道された。

   T.自殺者数と男女比                          
   U.自殺の「原因・動機特定者数」と「原因・動機不特定者数」       
   V.原因・動機特定者の「原因・動機別自殺者数(大分類:7項目)」と男女比 
   W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52項目)」と男女比   
   X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合          

T.自殺者数と男女比
                           男女比【男/女】
      総 数     男     女     自殺者数(自殺率)
      27,283    18,787   8,496     2.21  (2.33)
                (自殺率は、人口10万人あたりの自殺者数を示す)

U.自殺の「原因・動機特定者」と「原因・動機不特定者」

      総 数    原因・動機特定者    原因・動機不特定者
      27,283    20,256(74.2%)    7,027(25.8%)

V.原因・動機特定者の「原因・動機別の自殺者数(大分類:7項目)」と男女比。

     (原因・動機)  (計) (男性) (女性) 【 男性 : 女性】  
      家庭問題    3,930  2,477  1,453   【 1.70 : 1 】  
      健康問題    13,680  7,909  5,771   【 1.37 : 1 】  
      経済生活問題  4,636  4,147   489   【 8.48 : 1 】  
      勤務問題    2,323  2,069   254   【 8.14 : 1 】  
      男女問題     912   552   360   【 1.53 : 1 】  
      学校問題     375   271   104   【 2.60 : 1 】  
      その他     1,462  1,052   410   【 2.56 : 1 】  

   (注意) 遺書等の自殺を裏付ける資料により、明らかに推定できる原因・動機を、
     自殺者一人につき3つまで計上可能としているため、原因・動機特定者の原因
     ・動機別自殺者数の和と、原因・動機特定者数(20,256)とは一致しない。

◆ 昨年・一昨年は、年間自殺者数が3万人を割った。しかし、1日の自殺者は両年とも75人前後に達しており、状況は今も深刻と考える。男女比を見れば、相変わらず、男性の自殺が明らかに多いが、内閣府男女共同参画局は、このような、男性の置かれた状況について、他部局依存のスタンスであり、踏み込んだ施策を行っていない。自殺問題に限らず、既述の通り、災害対応全般についても、男女局は、女性の困難に対しては、非常に手厚い配慮と共感性を持って、意欲的に施策を行なうが、男性の困難に対しては、関心の低さ、或いは無関心が目立つ。                              最近の例で言えば、別記事として掲載している「被災地における、女性の悩み・暴力相談事業」の男性排除の問題があるが、この事業の名称を、例えば「被災者の悩み・暴力相談事業」のように修正し、男女双方を対象とした相談事業にすることが、本来の男女局の使命であろうが、両性への配慮を求める要望は全く反映されることなく、どうやら、年度当初、上命下達的に、同名の女性限定相談の実施が伝えられるようなのである。被災者の心の状況については、やはり別記事で既述のように、男女局自身が、平成24年版男女共同参画白書「全体版」にデータを掲載しているように、例えば自殺者については、その7割以上が男性となっているのである。ただし、申し添えるが、この数値を知るためには、白書「概要版」を見てはならない。なぜなら男女局は、「概要版」では、男性に顕著な自殺のデータを削除してしまったのである。

W.原因・動機特定者の、「原因・動機別の自殺者数(52小項目)」と男女比。    

◆ 自殺の原因・動機(52小項目)それぞれの男女別人数から、男女比を求め、性差が大きい順に、下表に配列した。52項目のうち、自殺者が男性に多い項目は48に及ぶ。圧倒的な多数である。男性は、体躯や筋力から見れば強者であり、同時に「強くあるべき存在」「守る役割を果たすべき存在」としての性別役割を背負うが、この項目別データを見て、改めて、男性が困難に直面しやすい社会状況と、男性の脆さ、強さに隠れた弱さ、男性に対するセイフティーネットの脆弱さを感じる。自殺対策部局だけの施策では、このような性差の現実は改善されなかった、という現実が、客観的数値として存在するが、なぜか内閣府男女共同参画局は、女性側に傾斜した支援ばかりを行なっている。
 ところで先日、ある若い女性と雑談をした。彼女は今、一人の男の子の母親なのであるが、もうすぐ、二人目の男の子の母親となる。彼女は、私との会話の中で言った。「男の子だから、強く・・・・・」。私は、彼女の言葉に、さりげなく頷く。しかし心の中では、特にこれからの日本の社会の中で、二人が男の子が歩まなければならない難しい道と、その母親としての彼女の、安らかになれない人生を思う。                
    ・下表の男女比は、少ない方を1として示してある。各小項目が属する大項目は、
    表中の語尾に、次の略記号で示した。
      家庭問題:K1  健康問題:K2  経済生活問題:K3  勤務問題:K4
      男女問題:D1  学校問題:G1  その他:S1

  (原因・動機)  (男 女 比)    (人 数)      
                   【 男性 : 女性 】 (男性)(女性)(計)
  倒産:K3             【 45.00 : 1 】   45   1   46
  負債(連帯保証債務):K3      【 20.00 : 1 】   20   0   20
  負債(多重債務):K3        【 15.78 : 1 】  647   41   688
  事業不振:K3           【 15.77 : 1 】  568   27   438
  失業:K3             【 14.67 : 1 】  411   28   439
  職場環境の変化:K4        【 12.17 : 1 】  280   23   303
  就職失敗:K3           【 10.91 : 1 】  251   23   247
  犯罪発覚:S1           【 9.87 : 1 】  158   16   174
  仕事疲れ:K4           【 9.46 : 1 】  587   62   649
  その他:K4            【 8.85 : 1 】  354   40   394
  負債(その他):K3         【 8.49 : 1 】  773   91   864
  借金の取り立て苦:K3       【 7.83 : 1 】   47   6   53
  自殺による保険金支給:K3     【 6.66 : 1 】   60   9   69
  生活苦:K3            【 5.51 : 1 】 1,081  196  1,277
  子育ての悩み:K1         【 1: 4.62 】   24  111   135
  職場の人間関係:K4        【 4.28 : 1 】  437  102   539
  その他:K3            【 4.20 : 1 】  244   58   302
  教師との人間関係:G1       【 4.00 : 1 】   4   0    4
  その他:S1            【 3.55 : 1 】  462  130   592
  そのほかの進路に関する悩み:G1  【 3.53 : 1 】   92   26   118
  病気の悩み・影響(アルコ-ル依存症):K2 【 3.46 : 1 】  163   47   210
  入試に関する悩み:G1       【 3.28 : 1 】   23   7   30
  学業不振:G1           【 3.09 : 1 】  102   33   135
  夫婦関係の不和:K1        【 2.67 : 1 】  729  273  1,002
  身体障害の悩み:K2        【 2.57 : 1 】  198   77   275
  家族からのしつけ・叱責:K1    【 2.51 : 1 】  108   43   151
  失恋:D1             【 2.40 : 1 】  207   86   293
  その他:G1            【 2.27 : 1 】   25   11   36
  病気の悩み(身体の病気):K2    【 2.03 : 1 】 2,993 1,470  4,463
  その他:D1            【 2.00 : 1 】   36   18   54
  家族の将来批判:K1        【 1.89 : 1 】  384  203   587
  その他:K2            【 1.88 : 1 】  166   88   254
  その他:K1            【 1.82 : 1 】  217  119   336
  孤独感:S1            【 1.75 : 1 】  339  193   532
  近隣関係:S1           【 1.71 : 1 】   36   21   57
  そのほかの家族関係の不和:K1   【 1.61 : 1 】  277  171   448
  介護・看病疲れ:K1        【 1.57 : 1 】  164  104   268
  結婚をめぐる悩み:D1       【 1.43 : 1 】   53   37   90
  病気の悩み・影響(薬物乱用):K2  【 1.40 : 1 】   35   25   60
  家族の死亡:K1          【 1.36 : 1 】  313  229   542
  いじめ:G1            【 1.33 : 1 】   4   3    7
  親子関係の不和:K1        【 1.30 : 1 】  259  198   457
  犯罪被害:S1           【 1.25 : 1 】   5   4    9
  不倫の悩み:D1          【 1.22 : 1 】   91   74   165
  病気の悩み・影響(統合失調症):K2 【 1.21 : 1 】  694  571  1,265
  病気の悩み・影響(他の精神疾患):K2【 1.20 : 1 】  721  600  1,321
  そのほかの学友との不和:G1    【  1: 1.14 】   21   24   45
  そのほかの交際をめぐる悩み:D1  【 1.13 : 1 】  165  145   310
  後追い:S1            【 1.13 : 1 】   52   42   98
  病気の悩み・影響(うつ病):K2   【 1.01 : 1 】 2,939 2,893  5,832
  被虐待:K1            【  1 : 1 】   2    2   4

X.就職失敗による若者(20代)の自殺者数と男性の割合

◆ 昨年の春、「就活失敗し自殺する若者急増」という、警察発表のニュースが流れた。関連して、2008年から昨年までのデ−タを調べたところ、下表の通りであった。数値を見れば、自殺者の8割から9割を男性が占めている。このような現実があるにもかかわらず、安倍晋三という人は、「光り輝く女性」発言ばかりをくり返し、彼の口から、若い男性を含め、上記Vの表に示された、経済生活問題・勤務問題で呻吟する男性への支援の言葉は聞こえてこない。私に聞こえてこないということは、当事者の男性にも聞こえていないということだ。そういう安倍晋三の理不尽に、強い憤りを覚える。

◆ カ−ラジオを聞いていれば、今日も、人身事故が原因の列車の遅延情報が聞こえてくる。私はそのニュ−スを聞いて、経済生活問題・勤務問題・就職失敗という、男性にとって重く厳しい現実を前にして、線路に投身する彼らの姿を思う。

        年次別    総数  男性  女性  男性の割合
       2008(H 20)   86   69   17   80.2 %
       2009(H 21)  122   98   24   80.3 %
       2010(H 22)  153  138   15   90.1 %
       2011(H 23)  141  119   22   84.3 %
       2012(H 24)  149  130   19   87.2 %
       2013(H 25)  104   95   9   91.3 %


posted by 翠流 at 22:23| Comment(1) | 自殺関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は、安倍内閣は支持せず、またジェンダーフリー教育に賛成です。
男らしく・女らしく教育しようという主張はまま聞きますが、「男らしく」の本質を問うてみると、まともな回答が返ってきたためしがありません。これでは論外です。
現代は、男女を過剰に区別する社会になっています。そもそも、区別しなければ差別など起きないわけで、差別をなくすためにも区別を減らしていく、区別を意識しないことが有効だと思います。
Posted by 後ろに立つ論客 at 2014年07月06日 14:35
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