2014年03月02日

岩手日報社への要望書

1月21日に掲載した「岩手県 男女共同参画課ヘの要望書」のコメント欄に、
岩手県の「市民権さん」が、2月13日にURLを貼りつけてくれた新聞記事、
「【大船渡】女性の防災リーダー育成を:復興へ必要性議論」を放置することができず、
岩手日報社に要望書を送ることにした。
以下に、新聞記事の本文と、要望書を掲載する。
記事中の「NPO法人イコールネット仙台」には、確認したいことがあるが、
連絡がとれないので、
必要があれば、後日掲載する。

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岩手日報 新聞記事 (2014年 2月12日)
「【大船渡】女性の防災リーダー育成を:復興へ必要性議論」本文

  県男女共同参画センターは11日、大船渡市盛町のシーパル大船渡で「男女共同参画
 の視点から岩手の復興と未来を考えるin大船渡」を開いた。東日本大震災で女性が抱
 えた困難を社会全体の問題として考える重要性を確認。女性の意思を復興に反映させる
 ため、女性の防災リーダー育成の必要性も議論した。
  大船渡、陸前高田両市などから約30人が参加。仙台市のNPO法人イコールネット
 仙台の宗片恵美子代表理事が講義した。
  宗片代表理事は2011年9、10月に宮城県内の女性3千人を対象に行ったアンケ
 ート結果を紹介。プライバシーのない避難所生活のほか、介護や親戚との同居、失業で
 多くの人が困難を抱えたと指摘し「困難を個人の問題とせず、社会の課題として取り組
 む考えが重要だ」と強調した。
  復興計画に女性の視点を反映させるため、女性が世話をすることが多い障害者や妊産
 婦、病人、高齢者、子どものニーズを踏まえたサポート態勢や、女性の防災リーダー育
 成、女性に配慮した避難所運営マニュアル作りなどが必要だとした。

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                                平成26年3月1日
岩手日報社 編集局 報道部 様
                                 ( 翠 流 )
               要 望 書

  災害対応報道に見られる、男性に対する人権無視、人権軽視の回避について。

 既に、2月14日に、岩手日報読者相談センタ−に電話を入れ、要望の概要はお伝えい
たしましたが、2月12日の岩手日報に掲載された記事、「【大船渡】女性の防災リーダー
育成を:復興へ必要性議論」の執筆を担当した記者の視点に、男性の人権に対する配慮の
欠落を感じ、災害対応に関わる男性差別の回避を求める者として、要望書を送らせていた
だくことにいたしました。「記事を担当した記者と直接お話をしたい」という私の要望は
叶えられませんでしたので、大船渡で行われた集会の実態と、新聞記事の内容との整合性
を確認することはできませんが、その如何に関わらず、担当記者に、男性の人権に配慮す
る視点があれば、新聞記事は、女性に対する配慮だけに終始することなく、問題提起、或
いはそれに類する形で、男性に対する配慮も、文章として現れたはずと思います。   

 既に、東日本大震災発生の年の秋に、女性団体は、内閣府に対して、「災害時の女性(だ
け)に対する配慮をまとめよ」という要望書を提出しており、それに呼応しつつ、内閣府
男女共同参画局が行ってきた震災関連の施策は、そのホ−ムペ−ジの「災害対応」を見て
も明らかなように、男性に対する人権無視、或いは軽視のもとに行われてきたと考えて誤
りはなく、昨年3月に公開された「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(案)」
にも、それが顕著に現れておりました。例えば、「指針(案)」の「避難所の開設」等の
項目には、特に、人間の尊厳に関わるプライバシ−の問題について、女性に対しては非常
に手厚い配慮を明記していたにもかかわらず、男性に対しては、配慮は、皆無だったので
す。しかし幸いなことに、この「男性に対する人権無視」は、意見交換会と意見募集の過
程を経て、「指針」の「解説・事例集」には多大な問題を残しつつも、少なくとも「指針」
については修正され、男性に対する配慮を付け加える形で、昨年の5月に公開されました。
その「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の4ペ−ジには、次のような文
章が記されています。

   避難生活において人権を尊重することは、女性にとっても、男性にとっても、
  必要不可欠であり、どのような状況にあっても、一人ひとりの人間の尊厳、安全
  を守ることが重要である。

 この、男女双方の人権に配慮する視点、これこそが、人間として、あるべき視点、災害
対応の根幹に据えられるべき視点であって、それは、日本国憲法 第14条、そして男女共
同参画社会基本法第3条によっても保障されています。女性だけではなく、男性にも、人
権はあるのです。更に踏み込んで言えば、人間の集団には、「男性」と「女性」というよ
うな二項対立的な視点では説明しきれない領域が存在します。例えば、その典型として、
性同一性障害の人たちのような性的マイノリティ−の存在がありますが、併せて、典型で
はない人たちの間にも、二項対立的視点では説明しきれない、感受性のグラデ−ションの
領域が存在するのです。例えば、プライバシ−に対する配慮を強く求める人は、後述する
ように、女性だけではなく、男性にも存在します。このような事実、二項対立的視点では
説明しきれない人間の多様性を踏まえ、先入観や性的偏見を排除した視点、例えば「男性
だから配慮する必要はない」というような不当な性的偏見を排除した人権尊重の視点、そ
れが、災害対応や報道を担う全ての人たちに、常に必要なのではないでしょうか。

 以上のような観点から、大船渡で行われた集会と、その報道を担当した岩手日報の記者
の視点に関わって、次のような問題点を指摘させていただきます。

                   記

 @ 新聞記事中に「東日本大震災で女性が抱えた困難を社会全体の問題として考える重
  要性を確認」とあるが、震災で困難を抱えたのは女性だけではない。例えば、下表(
  「男女共同参画白書:平成24年全体版」から引用)でわかるように、男性に対する支
  援の必要性が、「自殺者数の男女比」や「アルコ−ル依存」に強く現れている。

           【東日本大震災に関連する自殺者数の男女別の割合】
                        女性   男性   計   
   震災関連自殺者数(H23年6月〜24年2月)  24.6%  75.4%  100%  
   全国の自殺者数(平成23年)        31.6%  68.4%  100%  

          【飲酒量増加】  【不眠症の疑い】  【精神的問題:(注1)参照】
          女性  男性   女性   男性    女性   男性   
   陸前高田市  3.2%  6.2%   44.4%  27.7%   15.2%  8.7%   
   石巻市    3.5% 11.5%  50.2%  32.4%   20.0%  12.3%   
          (注1)指標10以上の人の割合を示す。指標となる数値が高いほど、
             精神的な問題がより重い可能性があるとされる。     

 A 東日本大震災以降、災害対応は、報道を含め、女性優先で行われてきた経過がある。
  同時に、「男性は我慢しなければならない」、「男性は女性を守らなければならない」
  「男性は弱音を吐いてはならない」というような、「固定的性別役割意識」が、男性
  自身や、社会の中に強くあり、男性は、要望や苦しみを表に出せない、或いは出さな
  い場合が多い。このような状況の中で、むしろ、「男性が抱えた困難」が、「社会全体
  の問題」として捉えられていない状況が、温存、或いは、場合によっては、むしろ拡大
  している状況があると思われる。従って、女性の場合だけでなく、「男性が抱えた困
  難」についても、それを「社会全体の問題として考える」視点が、非常に重要である。

 B 新聞記事には、「宗片代表理事は 2011年 9、10月に宮城県内の女性3千人を対象
  に行ったアンケート結果を紹介」とあるが、女性だけを対象としたアンケ−ト結果を
  使用しているために、集会の視点が、「男女共同参画の視点」になっていない。標題
  は「男女共同参画の視点から岩手の復興と未来を考えるin大船渡」となっているが、
  この表現は集会の実態と乖離している。男女双方を対象としたアンケ−ト結果は、既
  に、内閣府男女共同参画局ホ−ムペ−ジの「男女共同参画白書:平成24年全体版」
  にあり、集会での引用は可能であったはずである。ただし、申し添えておくが、「白
  書」に記された「アンケ−ト結果の解釈、説明文」には、「はじめに結論(女性優先)
  ありき」の視点があり、これについては、昨年の10月に、内閣府男女共同参画局に
  対して、私から、要望書の形で指摘させていただいた。【別添え資料V】

 C アンケ−ト結果に示された数値等で、「男女の比較」ばかりを行っていると、数の
  少ない人たちに対して、人権無視、人権軽視が発生する。既に述べたように、人間は
  多様であること、そして、多様な人間すべてに、等しく尊重されるべき人権があるこ
  とを忘れることなく、災害対応は行われなければならない。

 D 新聞記事にある「プライバシーのない避難所生活」に、多大な苦痛を感じるのは、
  女性だけではない。男性の中にも、非常に強い苦痛を感じる人がいる。例えば、私の
  ように。いや、勿論私だけではなく、前述の「男女共同参画白書:平成24年全体版」
  には、次のようなアンケ−ト結果が記されており、プライバシ−に対する配慮を強く
  求める男性は、決して少なくはないことが示されている。            

   「災害直後からの避難所での生活について困っていること」
        (本編・第1部・特集・第2節・1・避難所の状況・第1−特−17図)
      「困っていること」として「プライバシーが確保されていない」ことをあげ
      た被災者の割合は、女性で39.0%であるが、男性でも30.7%が「困ってい
      る」と答えている。
   「備蓄や支援物資に対する要望」
        (本編・第1部・特集・第2節・1・避難所の状況・第1−特−18図)
      「プライバシ−間仕切り」の要望は、女性で29件となっているが、男性でも
      27件の要望がある。

   なお、特に、男性に対するプライバシ−無視・軽視の問題に関わって、私が、昨年
  の8月と11月に、ある団体の季刊誌に投稿した文章、「男女共同参画に翻弄される日
  々【1】【2】」を、【別添え資料T・U】として同封させていただいた。それをお読み
  いただき、私のような感受性の男性の存在を、改めて認識していただきたい。

 E 記事中の、「女性の防災リーダー育成の必要性」に私は共感するが、問題は、どの
  ようなリ−ダ−が育つかにある。女性支援ばかりを強調して、男性の人権を無視、軽
  視するようなリ−ダ−ではなく、すべての人の人権に配慮する防災リ−ダ−が、男女
  共に必要である。

 F その他、新聞記事に記された事項については、失業は勿論女性固有の問題ではない
  し、介護・看護等の問題についても、女性に多いという実態はあっても、女性固有の
  問題ではない。場合によっては、介護に直面した男性が、かえって悲惨な事件に足を
  踏み入れる現実があることも、既に報道されている事実である。両性に配慮する視点
  が必要である。                               

 G 要するに災害対応は、常に、全ての人の人権に配慮する視点で行われなければなら
  ないのであって、健常者に関して言えば、特定の人たちを優遇する施策や、逆に、特
  定の人たちの人権を無視、軽視する施策は、絶対にあってはならない。そういう、考
  えてみれば当たり前の視点で、私はこの要望書を書いた。それを岩手日報社に送る理
  由は、東日本大震災以降、震災に関わる災害対応が、あまりにも女性優先で行われて
  きた事実があり、報道も、それを是認するかの如き論調が多く、男性の人権が、無視、
  軽視される現実を見てきたからである。

以上、今後の災害報道に関わる要望として、宜しくご配慮お願い申し上げます。


この記事へのコメント
他県にお住まいの方がこれだけ被災地と男性について考えていただいていると言う事だけでも十分感動しています。
僕自身で作成した文章は各関連部署には送りましたが、結果は何とも言えない印象ではありますが・・・。

僕自身の意見としては、被災地には余計支援などはしない方が良いかと思うんです。女性だけのためを思って支援している人が居るならそれは願望どおりという事になるのでしょうが、男性のことも考えて支援している人がいるのなら、残念ながらその思いは伝わっていないと思うのです。
被災地ではあらゆる面で「女性優遇」だとか「女性特別扱い」となっている現状を知れば、見方も大分変わって来るでしょう。
Posted by 市民権 at 2014年03月04日 19:54
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