2013年10月13日

投稿原稿−1 ・・・ 「男女共同参画」に翻弄される日々 【1】

このブログの、主に、次の三つの記事をまとめて、加筆・修正し、
『「男女共同参画」に翻弄される日々』と題して、
地方の、ある団体の、季刊誌(手製)に投稿することにした。
     「男性更衣室・・・退会」
     「裏切りの男女共同参画」
     「防災・復興の取組指針・・・案から指針へ」
以前の私にしてみれば、投稿など、まるで考えてもみないことであったが、
予期せずして現れた、「誰かに伝えたい」という思いの帰結である。
投稿にはペ−ジ数制限があるということで、不本意ながら、原稿を2分割せざるを得なくなったが、
前半は、既に7月に投稿し、8月に掲載済み。後半は、今月投稿、11月掲載の予定である。
今回は、とりあえず、ここに前半を掲載する。

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「男女共同参画」に翻弄される日々 【1】
                                       ( 翠 流 )
1.はじめに

 私は長い間、大手スポ−ツクラブ「K」の全国会員であったが、2年前、ある支店の男性更衣室に「女性」清掃員が入る問題が解決されなかったために、Kを退会して、地方法務局の人権擁護課に、人権救済の申し立てをした。当時の人権擁護課の課長さんは、私の申し立てに共感的な理解を示し、次のような判断をしてくださった。         

       (翠流)さんのおっしゃることはよくわかる。Kスポ−ツクラブの対応は、    
      あなたが男性であるが故に行われた、「不当な性的偏見に基づく人権侵犯、    
      ジェンダ−ハラスメント」だ。                  

 地方法務局は、この合意に基づいて調査・検討に入る。しかしそれから半年の後、私のもとに送られてきた「処理結果」は、私の期待を裏切るものであった。文書には次のように記されていた。                                

       平成23年6月17日に貴殿から申告のありました、スポ−ツ施設における     
      性的偏見に基づく男性利用者の不当な扱いにつきましては、調査の結果、     
      人権侵犯の事実の有無を確認することができず、平成23年11月28日に、
      侵犯事実不明確の決定をしました。            

 この不当な処理結果について、私は、それが「行政処分ではない」という理由によって、「不服申し立て」をすることができなかった。「人権侵犯事実不明確」の理由を知るために開示請求も行ったが、開示されたのは私の発言や行動に関わる部分だけで、肝心の理由に関わる部分は、すべて黒塗りであった。                     
 理由を知りたいという強い思いで食い下がる私に、あるとき課長は、つぶやくように言った。「先例になってしまうからですよ・・・・・」。課長は、「上の職員とも相談した」と言った。そしてその職員は、法務省の人権擁護局の職員のようであった。
 この件があってから、私は、男性の人権擁護に取り組む団体を探すようになり、いくつかの契機から、内閣府男女共同参画局の施策に関心を持つようになった。例えば、災害対応、ポジティブ・アクション、男女共同参画分野別予算。そして私は、次第に、「男女共同参画」という「美しい言葉」の背後に、実は、あたかもその「美名」に隠されるかのようにして、男性に対する人権軽視、人権無視、差別が存在すると、日を追うごとに強く、感じるようになってしまった。                          
 ポジティブ・アクションと分野別予算については後述するが、災害対応については、上の処理結果が届いた頃、私は気になるニュ−スを聞いた。それは、ある女性団体が、内閣府に対して「災害時の、女性に対する配慮をまとめよ」という要望を出したというニュ−スであった。私はこれを聞いたとき、直感的に、災害対応マニュアルに「男性に対する、人権・プライバシ−の無視、軽視」が現れると思った。そして、この予測は、今年の3月に、見事に的中してしまうのである。                       
 内閣府男女共同参画局は、3月28日に「男女共同参画の視点からの防災・復興の取り組み指針(案)」(注1)を公開し、その意見交換会を行った。私は、内閣府に、いくつかの問い合わせの電話をする中で、偶然それを知った。参加希望を出した私に、交換会の前夜、メ−ルの形で指針(案)が送られてきた。私はそれを読んで非常にショックを受けるのである。なぜここまで、私の予測が的中しなければならないのか。今はもう、全国津々浦々にまで根を下ろした「男女共同参画」という「美しい」はずの言葉、その頂点に位置し、しかも日本国憲法第14条・第13条、そして、男女共同参画社会基本法第3条の直下にあるはずの内閣府男女共同参画局が、なぜここまで、男性の人権に対する配慮のない、軽率な指針(案)を出すのか、出せるのか、私は全く理解できなかった。指針(案)の、基本的な考え方に関わる部分については、誰かの批判で後から機械的に挿入されただけだろうと私は推測しているが、不安が溶けて消えてゆくような、次のような文章はあったのである。

      避難生活において人権を尊重することは、女性だけでなく、男性にとっても     
     必要不可欠であり、どのような状況にあっても、一人ひとりの人間の尊厳、安全
     を守ることが重要である。              

 ところがこの精神は、各論の、例えば「避難所」のような、人権・プライバシ−との関わりの強い部分では、全く生きていかった。文章は、女性に対する配慮ばかりに終始し、男性に対する配慮は、完全に欠落していたのである。                
 しかし幸いなことに、この「片目の」指針(案)は、提示後の意見募集の期間を経て、男性に対する配慮を付け加える形で修正され、「男女共同参画の視点からの防災・復興の取り組み指針」(注2)として5月30日に提示された。しかし、「解説・事例集」(注3)には、「指針」に従って修正しきれていない部分があり、もしも現場がそれを使えば、紛れもない「男性に対する、人権・プライバシ−の無視、軽視」が現れると予測されるのである。私は先日、内閣府と各都道府県・各政令指定都市の男女共同参画部局すべてに、この件について、意見書や要望書を送った。しかし、なぜ私がそんなことまでしなければならないのか。本来ならば、内閣府男女共同参画局が、「解説・事例集」の、指針と矛盾する部分を直ちに修正して、全国に送るべきはずなのに・・・・。             
 今、この文章を読んでくださっている方の中には、私が「男性」であるが故に、私の主張に違和感を感じる人がいるのかもしれない。しかし私の立場からすれば、それこそがまさに、私が「男性であるが故に与えられる、不当な性的偏見」なのである。そして、その偏見は、災害対応の問題だけではなく、生活の様々の場面で、日常的に、私に強いストレスを与え、私を翻弄し続けている。                        
 人間の感受性は多様である。人間を「男性」と「女性」に分け、単純化して論ずる二項対立的な視点では、説明しきれない多様性が、人間の社会にはある。比較的独立性が高いと思われる個性としては、LGBTのような人たちの存在があり、例えば、性同一性障害の人たちの性別適合手術の合法化のような人権尊重の気運は、非常に大切な希望だと私は思うが、人間の個性は、勿論そういう比較的独立性の高い人たちだけにあるわけではなくて、私たち人間の社会の中に、グラデ−ションを形成しながら、多様性として存在するのである。そして、人権の尊重には、その多様性の認識が不可欠であると私は思う。以前、人権問題の講演を聞きに行ったとき、ある講師が「差別撤廃運動は、差別された人たちの中から始まる」と言った。そして今の私は、その言葉を思い出しながら、多様性の中の、ある位置から、被差別者としての自分を意識して、この文章を書いている。     
 これから私がここに載せる文章は、3月の「指針(案)」提示から5月の「指針」提示までの間に、私が、自分のブログの原稿として綴った文章を、修正、加筆したものである。「男女共同参画」という「美しい言葉」に、人権尊重の希望を与えられるのではなくて、逆に、不安と疑念の中で、翻弄される私の文章である。ポジティブ・アクションと分野別予算に関わる疑問も含めて、私はそれを、誰かに聞いてほしいと思い、投稿させていただくことにした。

2.男女共同参画に翻弄される日々                  

(1)眠られぬ夜                                

 今年の3月下旬のことであるが、内閣府男女共同参画局が公開した「防災・復興の取組指針(案)」、正しくは、「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(案)」の内容が、特にプライバシ−等の人権に関わる問題について、男性に対する配慮をあまりにも欠いていたために、私は、しばらくの間、そのショックから抜け出すことができず、「いのちの電話」の頻回通話者となっていた。酒を飲みながら、つながらない「いのちの電話」に、くり返しくり返し電話をかけ、数時間の浅い眠りの後に、また同じことをくり返す。運良くつながるも、相談員の対応に満足できず、白々と夜が明けるまで電話をかけ続ける日々が続いた。この間、もしかするとストレスによる疲弊もまた発病の一因となって、私は食事がとれなくなり、わずかの期間に体重が4s減った。このような痩せかたをしたのは、私には初めてのことである。指針案の具体的な内容については、その一部を、この文章の最後で取り上げるが、月があけて1週間程経って、私はようやく疲弊から抜けはじめ、男女共同参画局に、指針案に対する意見を送れるようになった。最後の意見を送ったのは、締切の前日である。                               

(2)逆差別                                  

 ところで私は、つい最近まで、「男女共同参画」という言葉を、好感を持って捉え続けてきた。私は、社会に存在する多様な人たちの人権が、憲法第14条と13条のもとで、或いはそれ以前に、人間としての平等の観点から、最大限に尊重される社会にならなければならないと考えてきた。だから私は、自分を男女平等論者と言ってよいのである。そして私は、この位置で捉えた「男女共同参画」という「美しい」言葉に、憲法に背く、いやそれ以前に、人間としての倫理に背く、男性差別が隠されているなどとは夢にも思っていなかった。ところが、私は、先に記したきっかけから、男性の人権擁護に取り組む団体を探して「ある団体」にたどり着き、「ポジティブ・アクション」の存在と、そこに潜む男性差別を知るようになる。何をもって具体的なポジティブ・アクションとするかは、個人や団体によって解釈や主張が異なるようではあるが、例えばそれが、女性の就労支援のための、保育環境の整備のようなアクションであるならば、それは必要なことなのである。ところが、とりあえず「似非フェミニスト」という言葉を使わせていただくが、そういう人たちは、採用や昇進等にあたって、女性にゲタをはかせる形の、女性優遇の、つまりは男性差別の選考を企図し、それは、これからだけではなくて、実はもう、既に行われてきたことのようでもあるのだ。例えば、「女性国家公務員の採用・登用の現状等:人事院」に記されたグラフ、「T種試験事務系(行政・法律・経済)区分の申込者・合格者・採用者に占める女性の割合(昭和63年から平成22年まで)」(注4)を見ると、平成14年以降、採用者に占める女性の割合は、毎年、明らかに、合格者に占める女性の割合より高くなっている。この事実から、採用に関わる面接等の段階で、関係各省庁が、女性優遇の、つまりは男性差別の選考を行ってきた可能性を指摘できるのである。この件について、私の質問に答えたある職員は、「女性が面接で優秀だったからだ。」と答えた。しかしそれは、そういう発言で隠蔽可能な領域で、女性優遇採用が行われてきた結果であると、そういう見方もまた、可能なのである。                      
 「似非フェミニスト」たちは、過去の女性差別による不利益を言い訳にして、女性優遇のポジティブ・アクションを、男性差別ではないと正当化しようとする。しかしたとえば、採用試験の結果が、合格や採用のラインに達している男性が、「男性である」という理由によって不合格や不採用となり、ラインに達していない女性が、「女性である」という理由によって合格や採用になるとすれば、それはまさに、裁かれるべき不正入試と同じではないのか?、ましてや今は就職難の時代、昨年の春、「就職活動に失敗して自殺する学生が増えた」という警察発表のニュ−スが流れたが、その8割から9割が男性なのである。この事実が、たとえポジティブ・アクションと無関係であったとしても、自殺の道を選んでいった男性は、口には出さなくても、「男性」である責任を重く背負っていたのではないかと私は思う。そういう男性の特性を思うとき、私には、女性優遇採用としてのポジティブ・アクションが、二重の罪を背負う存在に見えるのである。しかし今の日本には、既にそれが、政治戦略としても使われるようになってしまった現実があると思われ、それが一層重く心にのしかかるのである。過去の女性差別の責任を、女性優遇、男性差別という形で、現在の男性に負わせるポジティブ・アクション。それは、「ある団体」の言葉を借りれば、「時空を越えた連座制」であって、差別の加害者ではない現在の男性に対する加害という側面を持つ。そしてそれは、差別撤廃運動の過程で現れる逆差別そのものであって、「報復」を是認し、「報復の連鎖」を誘発するアクションだと思う。      
                                         ( 続 く )
【インタ−ネット.検索項目】
(注1)内閣府男女共同参画局.災害対応.防災・復興の取組指針.「男女共同参画の視点からの防災・
   復興の取り組み指針(案)」についての意見募集.1:意見募集対象.「男女共同参画の視点から
   の防災・復興の取り組み指針(案)」
(注2・3)内閣府男女共同参画局.災害対応.防災・復興の取組指針.「男女共同参画の視点からの防
   災・復興の取り組み指針」
(注4)「女性国家公務員の採用・登用の現状等:人事院」「T種試験事務系(行政・法律・経済)区分
   の申込者・合格者・採用者に占める女性の割合(昭和63年から平成22年まで)
posted by 翠流 at 12:19| Comment(0) | 投稿原稿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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