2013年09月15日

男女別統計の不当な扱い (その2)

            (3) 統計的差別、或いは、初めに女性優遇の結論ありき。
            (4) 思い出す、気になるニュ−ス
            (5) 被災者の自殺統計

(3) 統計的差別、或いは、初めに女性優遇の結論ありき。

   ・・・・・ 男女共同参画白書(平成24年:全体版)・本編・第1部
          「特集・第2節(被災者の状況)」の説明文を素材として。 

 前回の記事(1)を補完する内容になるが、(1)で取り上げた数値を用いて分りやすく表現すれば、避難所で「プライバシーが確保されていないことに困った」被災者が、女性で39.0%、男性で30.7% という数値が白書に存在する。この数値を取り上げて、ことさら性差を強調し、男性は女性より割合が小さいから、プライバシーへの配慮は女性限定で良く、男性への配慮は不要である、というような主張をすれば、それは統計的差別であって、配慮されない30.7%の男性は人権侵犯とでも言うべき被害を受ける。それでも、「あなたは男性なのだから我慢をしろ」というような性別役割の強要を、口には出さなくても平然とするのが、内閣府男女局の体質であると、そういう認識を、私はこの3年間の経験で持つようになってしまった。その背景については、既に具体的な事例を挙げて述べてきたが、最近、白書の様々の部分に、類似の特徴を持つ文章のあることに気づくようになった。今回は、その一例を、白書中の統計資料【注1】の説明文【注2】について記す。この、私の発言を、「小さなこと」と言う人がいるようであれば、それは個性を無視した「男らしさハラスメント」である。例えば、避難所での「入浴、シャワ−、プライバシ−、トイレ」等に関わる配慮は小さなことではない。以前、ある政党に災害対応について問合せの電話をした時、受けた女性が、私に、「でも、そういうことって小さいことですよね」と言った。しかし、もしも電話をした私が女性であったなら、彼女は「小さなこと」とは言わなかっただろう。そういうジェンダーバイアスが、男性に対しては存在する。

    【注1】統計資料:「第1−特−17図」からの引用数値
            ・・・・ 避難所で困っている人の割合(男女別・複数回答)(%)
                          (男性) (女性)
       「シャワ−や入浴があまり出来ない」・・・・・ 42.6  49.5
       「プライバシ−が確保されていない」・・・・・ 30.7  39.0
       「トイレの数が少ない」・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20.3  27.8

    【注2】上記資料に関する説明文
           ・・・・平成24年白書全体版、本編・第1部・特集・
              第2節(被災者の状況)・1(避難所の状況)から引用。
        前出の内閣府・消防庁・気象庁「津波避難等に関する調査」(平成23年)
       によると、災害直後からの避難所での生活について困っていることとして
       は、女性は、「シャワ−や入浴があまり出来ない」(49.5%)、「プライバ
       シ−が確保されていない」(39.0%)、「トイレの数が少ない」(27.8%)
       の割合が、男性に比べて高くなっており、女性の方が避難所での生活につ
       いて不便と感じている人が多くなっている。

 上記【注1】の数値からわかるように、男性でも「不便を感じている」人は、決して少なくはない。しかし、その実態は文章では表現されておらず、女性にとっての不便さばかりが強調されている。この表現と、今までの記事で指摘してきた内閣府男女局の女性限定配慮体質は必然として結びつきやすく、男女局が、この文章を、男性の統計数値の提示なくして一人歩きさせ、災害対応時に、シャワ−・プライバシ−・トイレ等に関わる配慮を、すべて女性優先で行い、男性が、理不尽な我慢のもとに強いストレスを強いられる可能性は十分あると、私は経験的認識として懸念するのである。
 因みに、このような、性差の意図的強調によって、女性側への利益誘導を企図しようとする男女局の体質が、例の「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の最終項目、「8 男女別統計の整備【注3】」の文章に、よく現れていると、私は感じる。

    【注3】「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の
                      最終項目、「8 男女別統計の整備」

      ○ 防災・復興の施策を推進する際に男女共同参画の視点を反映するために
       は、男女が置かれている状況をデータ等により客観的に把握することが重
       要であることから、災害発生時は、被災者及び災害対応を行う者に関して、
       男女別統計の整備に努めること。
      ○ 被災者等に対して行われる意識調査において、一般に世帯主を対象とし
       た世帯単位のアンケート調査では女性の意見を把握することは難しいこと
       から、【注4】世帯の構成員ごとの意識をきめ細かく把握できるような調
       査方法や集計方法を可能な限り工夫すること。(指針案では【注4】の部
       分に「個人単位など」という語句があった。他に修正部分はない。)
      ○ 災害が発生してから急に男女別統計を整備しようとしても、地方公共団
       体の業務負担能力等から実行は困難なことから、平常時より、男女の置か
       れた状況を客観的に把握できる統計の在り方について検討を行い、男女別
       データを可能な限り把握できるようにしておくこと。

 要するに、ここに記されている内閣府男女局のスタンスは、常時からの性差の強調であり、その背後には、女性優遇配慮正当化の企図があると私は感じる。男女局は恐らく、男女別統計の結果を予測しており、得られた数値を、「女性は」「男性は」という二項対立的性差の強調と女性優遇配慮正当化の素材として用いようとする意図があったのではないかと推測する。しかしそれは、男女局自らが、災害対応の「基本的な考え方」として、「取組指針」のp.4「4:男女の人権を尊重して安全・安心を確保する」に書いた理念と乖離する。そしてその乖離は「統計的差別」の出現と是認である。少数者の人権を捨象してはならない。私は再び引用する。男女局は、p.4に、次のように書いたではないか。

   【指針:p.4からの引用】 
     4 男女の人権を尊重して安全・安心を確保する
        避難生活において人権を尊重することは、女性にとっても、男性にとっ
       ても必要不可欠であり、どのような状況にあっても、一人ひとりの人間の
       尊厳、安全を守ることが重要である。

 私はこの引用文の視点に立って、指針案「8 男女別統計の整備」の文章の改善要望を、「意見書」の一部として記し、男女局に発送したが、全く反映していただけなかった。

(4) 思い出す、気になるニュ−ス

 ところで、一年ほど前であったか、私は、新聞で、ある女性ボランティア団体の活動を知った。彼女たちは、被災地で暮らす女性のガン患者、ガンの治療で脱毛に苦しむ女性に、ウィッグを贈る活動をしていた。被災という極限状況の中で、しかもガンという、それだけでも極限状況の病を抱えて苦しむ人にウィッグを贈る。その活動には、誰もが拍手を送るだろう。しかし、私はよくわからないのである。彼女たちは、なぜ、ガン治療で脱毛に苦しむ男性にはウィッグを贈らないのだろう? 

 もう一つ、ラジオ番組であったが、別の女性ボランティア団体の、被災地での活動が紹介されたことがあった。彼女たちは花の髪飾りを作り、被災地の女性に配っていたのだった。それは、すべての人たちに、美しい話として受け止められるだろう。しかし彼女たちは、なぜ、男性の胸にも一輪の花を、とは考えないのだろう。大震災という困難な状況の中で、身も心も疲弊する被災地での話だ。男性であっても胸に一本の花を贈られれば、心打たれ、たとえば一人で仮設住宅に帰り、一人の部屋で涙する男性はいるだろう。

 もう一つ、思い出すことがある。それは、被災者の自殺統計のこと。

(5) 被災者の自殺統計

 平成24年版男女共同参画白書(全体版)・本編・第1部・特集・第2節(被災者の状況)・5(心の健康状況)・第1−特−31図 には、被災者の男女別自殺者の割合が、次の数値としてグラフ化されている。
                                男性   女性
   東日本大震災に関連する自殺者数(平成23年6月〜24年2月) 75.4%  24.6%
   全国の自殺者数(平成23年)                68.4%  31.6%

 しかし、なぜかこの自殺の記事は、白書の「概要版」では削除されてしまった。私は、強い違和感を覚え、11月に、男女局に削除理由の問合わせをした。直接の担当者と話すことはできなかったが、中を継いでくれたSさんから、次の回答を聞いた。
    削除理由 @ 概要版にはページ数の制限がある。
         A 自殺データより、もっと重要なことがある。
         B 被災者の自殺データと、他の地域の自殺データに大差はない。

 しかし、いのちの重さを考えたとき、「自殺よりもっと重要なことがある」と言ってよいのだろうか? 「ページ数に制限がある」ことが削除理由になるのだろうか? もしかすると、男女局の概要版担当者は、「男性に顕著な危機はできるだけ切り捨てたい」と、心の底で考えていたのではないだろうか?


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