2015年01月30日

投稿原稿-4 ・・・ 男性の人権を守るために 【2】

4回目の投稿原稿を掲載する。
今回は「男性の自殺」を取り上げた。
例によって、
このブログの幾つかの記事をまとめたものであるから、
内容の重複があるが、
ご容赦いただければ幸いと思う。

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 男性の人権を守るために【2】

2.男性の自殺

(1) はじめに

 「いのちの重さは、男性より女性の方が重い」と主張する人は、とりあえずいないもの
と仮定するが、現実的には、後述する自殺デ−タに見られる明白な性差から、男性の場合、
恐らくは既存の性別観や、男性であるために背負う性別役割等の影響のもとで、解決不能
の危機や孤独に直面し、自ら死を選ぶことが、女性にくらべ、有意の差を持って多いもの
と推察される。自殺デ−タに見られる性差から、男性のいのちは、社会によって軽んじら
れていると表現することが可能である。勿論、女性に危機や孤独がないなどと言うつもり
は全くなく、要するに、可能性や頻度の問題である。                

 時代の変化を見ると、今の日本には、「男のくせに」とか「女のくせに」とか、そうい
う表現をタブ−とする価値観が広がりつつあるようで、男らしくない私は大変喜んでいる。
しかしこの変化は、まだ、はなはだ表面的なのであって、現実的には、男性は、従来から
の男らしさの規範、男性であるが故の呪縛を、陰に陽に押しつけられるし、自分自身でも
背負うことが多いと思う。                            

 たとえば、私の知人に、ある相談活動に従事する男性がいるが、彼はあるときこう言っ
た。「私は、女性から相談を受けると、相手の気持ちに寄り添い、親切に対応しようとす
るが、男性から相談を受けると、『男なんだから一人でやってみろ』と言いたくなってし
まう」と・・・。彼は、根はいい男性であるから、今はもう姿勢を変えたと思いたいが、相
談活動はいずれにしても、彼と話しをしていると、同様の性別観、性別役割の押しつけ
が随所に現れる。要するに、何事につけても初めに結論ありきで、彼は男性に対して、
困難や孤独や我慢や被差別の受容を要求する。そして彼は、その要求が男性に与えるス
トレスを理解しようとしない。

 また、私が時折会話をする20代の女性であるが、彼女の第一子は男の子で、ある日彼
女は彼の未来について、「男の子だから強く・・・」と言った。それは、とりもなおさず彼女
の愛の一つの形であろうし、社会通念的にも受け入れられやすく、強くなるのは、本人
の人格に愛の欠落がなければ大変結構なことだと、私は性別と無関係に思っているが、
私の中の、この投稿に至る内発性の故に、表面的には頷きながらも心中穏やかではなか
った。男性であることを背負い、孤独と危機の中で疲弊してゆく男性、その背後で煩悶
を余儀なくされる母親。そういう現実は確かにあるだろう。            

 ところで先日、私のブログにきてくださったある男性が、ワレン・ファレルの「男性
権力の神話」(久米泰介訳.作品社)を紹介してくださった。その冒頭の山田昌弘さん
(中央大学教授)の推薦文に、次のような一節があり、私の問題意識を的確に代弁して
くださっているように思われた。                          

    なぜ女性のつらさは問題にされるのに、
    男性の生きづさは問題にされないのだろう。

 山田さんのこの一節と共通の思いを、私は、「男性の自殺」を取り上げた自分のブログ
で、次のように表現してきた。

   しかし自殺者に男性が多いことは、厳然たる事実であって、
   ・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・
   自殺者の男女比が、もしも逆であったら、
   日本中が大騒ぎになっているような気もする。
   女性団体はたぶん、その現実を放置しないだろう。
   保護を求める女性たち、保護を受け入れられる女性たち、
   しかし保護を求めることができずに、
   「男性」であることを背負いながら、
   孤独のうちに死んでいく男たちがいる。

(2)自殺の状況

 自殺に関するデ−タは、厚生労働省と警察庁が集計しているが、厚生労働省は、家庭
からの死亡届をもとにしているとのことであるから、より自殺の実態に近いのは、警察
庁のデータであろうと推察される。ちなみに、「年間自殺者数が14年間3万人を越えた」
という報道は、警察庁のデ−タに基づいている。                 
 警察庁のデ−タは、内閣府自殺対策推進室が整理し、ホ−ムペ−ジに掲載している。
それをもとに、主に性比に着目して整理し直したデータを、4種類の表として文末に掲
載した。(注1)                                

 その【表1】に示されているように、1978年から2013年までの36年間、毎年例外
なく、男性の自殺が女性を上回っている。それ以前も恐らくは同様であろうと推測する。
警察庁は、自殺の原因・動機を大きく7項目(表2)に分類し、更にそれを51の小項目
(表3)に分類しているが、大分類では、【表2】の通り7項目全てで男性の自殺が女性
を上回っている。特に「経済・生活問題」と「勤務問題」では差が著しく、前者では、
男性の自殺が女性の8〜10倍、後者では7〜9倍に達している。小分類では、【表3】
のように、51項目中48項目で男性の自殺が女性を上回り、女性が男性を上回るのは 2
項目。残りの1項目は同数であった。                      

 また、一昨年の春、就職活動失敗による若者の自殺の増加が報道されたが、その状況
を、この6年間について性別と共に示せば、【表4】のように、自殺者の8割から9割を
男性が占めている。                              

(2)自殺対策

 国の自殺対策としては、年間自殺者数が3万人を越えて9年目(2006年)の、自殺
対策基本法の制定であるとか、翌年の、内閣府への自殺対策担当の設置、或いは自殺総
合対策大綱の策定などが聞こえてくる。全国の取組みは自治体により差があると聞いた
が、●●県ならば●●市の自殺予防フォ−ラムに「結実した」と表現したくなるような
取組みがあったし、県としては、自殺対策アクションプランの策定があった。そういう、
温度差をかかえながらも全国に広がっていった自殺対策の成果であるのか、或いは、若
干の好転とも言われる経済状況の変化の帰結であるのか等、主因は関係者に聞いても定
かにならないが、2012年から、全国の年間自殺者数は3万人を割った。しかしこの変
化の中にあっても、変わらない事実がある。それは、自殺が男性に多いという明白な
「性差」なのである。                               

 先日私は、ある自殺対策を担当する男性に、彼の、男性に対する性別観について尋ね
た。結果は私の予想通りであった。彼は、私がこの投稿原稿の冒頭で紹介した男性相談
員のような性別観が、自分の中にあると答えたのである。そしてそれは、恐らくは決し
て珍しいことではなく、むしろ平凡で一般的な価値基準として、多くの男性の中に存在
する。男性の、男性に対する支援は弱く、その関係性は、社会の中に根を下ろしてしま
っているのである。そしてそれは、自殺対策に限らず、次回再び取り上げる「災害対応」
についても、その施策決定の過程で強い影響を与えてきたし、これからも与え続けると
推察する。男性に対して「困難や孤独や我慢や被差別の受容を要求する」性別観が、女
性の自己本位性を是認し、膨張させ、男性差別の施策が出現する。      

【インタ−ネット検索項目】                          
(注1)平成20・21・22年度における自殺の概要資料(警察庁生活安全局生活安全企
画課)、及び、平成23・24・25年度における自殺の状況 (内閣府自殺対策推進室・警
察庁生活安全局生活安全企画課)を用いて算出。
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【表1】年間自殺者数の変化と男女比(1978〜2013年:36年間)        
   ・年間自殺者数が3万人以上であるか否かによって、36年間を三つの時期に区分し、
   各時期の年間自殺者数の幅を示した。                     
   ・男女比は、各年度の女性の自殺者数を1として、男性の自殺者数の割合を数値で 
   示した。表中の(自殺率)は、人口10万人あたりの自殺者数を示す。       

     (年次)    (年間自殺者数)    (男女比)【男/女】     
                         自殺者数  (自殺率)   
   1978年〜1997年  20,434 〜 25,524   1.6 〜 2.1 (1.7 〜 2.2)  
   1998年〜2011年  30,651 〜 34,427   2.2 〜 2.6 (2.3 〜 2.7)  
   2012年〜2013年  27,283 〜 27,858     2.2   (2.3 〜 2.4)  

【表2】原因・動機(大分類:7項目)別自殺者数と男女比(2008〜2013年:6年間)
    ・6年間の年間自殺者数の幅を、原因・動機別にした。            
    ・表の数値には、「原因・動機不特定者数」は含まれていない。         

   (原因・動機)     (年間自殺者数)    (男女比)【男/女】     

    健康問題      13,629 〜15,867     1.3 〜 1.5       
    経済・生活問題    4,636 〜 8,377     8.3 〜 10.3        
    家庭問題       3,912 〜 4,547     1.7 〜 1.9        
    勤務問題       2,323 〜 2,689     6.9 〜 8.8        
    男女問題        912 〜 1,138     1.4 〜 1.8        
    学校問題        364 〜  429      2.6 〜 3.8       
    その他        1,462 〜 1,621     2.1 〜 2.7        

【表3】原因・動機(小分類:51小項目)別自殺者数と男女比(2013年)     
    ・男女比は、自殺者数の少ない方を1として、性差の大きい順に配列した。 
    ・51の各小項目が属する大項目は、小項目名の末尾に、次の略記号で示した。
       健康問題:A  経済生活問題:B  家庭問題:C  勤務問題:D
       男女問題:E  学校問題:F  その他:G            

(順位)(原因・動機)         (男 女 比)         (人数)         
                   【 男性 : 女性 】  (男性) (女性) (計)    

1 倒産:B             【 45.0 : 1 】   45    1    46     
2 負債(連帯保証債務):B     【 20.0 : − 】   20    0    20     
3 負債(多重債務):B       【 15.8 : 1 】   647   41    688     
4 事業不振:B           【 15.8 : 1 】   568   27    438     
5 失業:B             【 14.7 : 1 】   411   28    439     
6 職場環境の変化:D        【 12.2 : 1 】   280   23    303     
7 就職失敗:B           【 10.9 : 1 】   251   23    247     
8 犯罪発覚:G           【 9.9 : 1 】   158   16    174     
9 仕事疲れ:D           【 9.5 : 1 】   587   62    649     
10 その他:D            【 8.9 : 1 】   354   40    394     
11 負債(その他):B        【 8.5 : 1 】   773   91    864     
12 借金の取り立て苦:B       【 7.8 : 1 】   47    6    53     
13 自殺による保険金支給:B     【 6.7 : 1 】   60    9    69     
14 生活苦:B            【 5.5 : 1 】  1,081   196   1,277     
15 子育ての悩み:C         【 1: 4.6 】   24   111    135     
16 職場の人間関係:D        【 4.3 : 1 】   437   102    539     
17 その他:B            【 4.2 : 1 】   244   58    302     
18 教師との人間関係:F       【 4.0 : − 】    4    0     4     
19 その他:G            【 3.6 : 1 】   462   130    592     
20 そのほかの進路に関する悩み:F  【 3.5 : 1 】   92   26    118     
21 病気の悩み・影響(アルコ-ル依存症):A【 3.5 : 1 】   163   47    210     
22 入試に関する悩み:F       【 3.3 : 1 】   23    7    30     
23 学業不振:F           【 3.1 : 1 】   102   33    135     
24 夫婦関係の不和:C        【 2.7 : 1 】   729   273   1,002     
25 身体障害の悩み:A        【 2.6 : 1 】   198   77    275     
26 家族からのしつけ・叱責:C    【 2.5 : 1 】   108   43    151     
27 失恋:E             【 2.4 : 1 】   207   86    293     
28 その他:F            【 2.3 : 1 】   25   11    36     
29 病気の悩み(身体の病気):A   【 2.0 : 1 】  2,993  1,470   4,463     
30 その他:E            【 2.0 : 1 】   36   18    54     
31 家族の将来悲観:C        【 1.9 : 1 】   384   203    587     
32 その他:A            【 1.9 : 1 】   166   88    254     
33 その他:C            【 1.8 : 1 】   217   119    336     
34 孤独感:G            【 1.8 : 1 】   339   193    532     
35 近隣関係:G           【 1.7 : 1 】   36   21    57     
36 そのほかの家族関係の不和:C   【 1.6 : 1 】   277   171    448     
37 介護・看病疲れ:C        【 1.6 : 1 】   164   104    268     
38 結婚をめぐる悩み:E       【 1.4 : 1 】   53   37    90      
39 病気の悩み・影響(薬物乱用):A  【 1.4 : 1 】   35   25    60     
40 家族の死亡:C          【 1.4 : 1 】   313   229    542     
41 いじめ:F            【 1.3 : 1 】    4    3     7     
42 親子関係の不和:C        【 1.3 : 1 】   259   198    457     
43 犯罪被害:G           【 1.3 : 1 】    5    4     9     
44 不倫の悩み:E          【 1.2 : 1 】   91   74    165     
45 病気の悩み・影響(統合失調症):A 【 1.2 : 1 】   694   571   1,265     
46 病気の悩み・影響(他の精神疾患):A【 1.2 : 1 】   721   600   1,321     
47 そのほかの学友との不和:F    【 1: 1.1 】   21   24    45     
48 そのほかの交際をめぐる悩み:E  【 1.1 : 1 】   165   145    310     
49 後追い:G            【 1.1 : 1 】   52   42    98     
50 病気の悩み・影響(うつ病):A   【 1.0 : 1 】  2,939  2,893   5,832     
51 被虐待:C            【 1 : 1 】    2    2     4     

【表4】就職失敗による若者(20代)の自殺と男性の割合(2008〜2013年:6年間)

      (年次)   (総数) (男性) (女性)   (男性の割合)   

    2008年(H 20)   86    69    17     80.2 %       
    2009年(H 21)  122    98    24     80.3 %       
    2010年(H 22)  153   138    15     90.1 %       
    2011年(H 23)  141   119    22     84.3 %       
    2012年(H 24)  149   130    19     87.2 %       
    2013年(H 25)  104    95     9     91.3 %       
posted by 翠流 at 16:04| Comment(0) | 投稿原稿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月14日

「あおもり被災地の地域コミュニティ再生支援事業実行委員会」へ

「男女共同参画の視点」という美名を使いながらも、
女性への配慮ばかりに終始し、男性には配慮しない女たち。
たとえばガレキの処理で衣服もからだも汚れ、
心身共に疲弊して避難所に帰ってきた男たちには、
からだを休める部屋もない。
それなのに女たちには、
アロマオイルまで用意した、手厚い部屋を用意する。
その、あきれるばかりの「男性差別の視点」を、
彼女たちは「男女共同参画の視点」とよぶ。
全く、ひどい話なのである。
男性には、人権など、ありはしない。
そして恐らくはそれを受け入れるのが男性の義務であるかの如く、
女性優遇是認の規範を、男性に押しつける男たち。
或いはまた、無言のままに通り過ぎる男たち。
そういう、「女たちの自己中心性」と、男たちの「男性に対する加害性」によって、
「男性差別」が出現し、拡大していく。
その、典型の一つとして、
ここに、「あおもり被災地の地域コミュニティ再生支援事業実行委員会」が作った冊子、【男女共同参画の視点を取り入れた「安心できる避難所」づくり訓練ヒント集】を取り上げる。
その URL は次の通り。

http://www.aomoricombiz.co.jp/hintosyu.pdf

これをご覧いただきながら、次の要望書を読んでほしいと思う。
私は、この要望書を「あおもり被災地の地域コミュニティ再生支援事業実行委員会」へ送り、
その写しを、
「青森県環境生活部、青少年・男女共同参画課、男女共同参画グループ」
「青森県 防災・消防課」
「内閣府 政策統括官(防災担当)」
そして、事業を委託した、「文部科学省、生涯学習政策局社会教育課」に送る。

なお、上記の「実行委員会」には、
青森の、「男女共同参画」課の職員が含まれている。

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                               平成27年1月●●日
あおもり被災地の地域コミュニティ            
再生支援事業実行委員会 様
                                     翠 流
                  要 望 書

     冊子:【「安心できる避難所」づくり訓練ヒント集】 に見られる、
    男性に対する人権無視・人権軽視・誹謗表現の是正について。

       ・・・・・「男女共同参画社会基本法第三条(男女の人権の尊重)」、及び、
         「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の視点から。

 昨年12月3日に福島市で行われました「防災・復興における女性の参画とリーダーシップ〜
第3回国連防災世界会議に向けてのシンポジウム」に参加しました折、貴実行委員会が作成
した冊子、【「安心できる避難所づくり」訓練ヒント集】を拝見し、そこに見られる「男性に
対する人権無視・人権軽視・誹謗表現」に、非常に強いショックを受けています。    

 その冊子の作成に関わる文部科学省の委託事業、「学びを通じた被災地の地域コミュニティ
再生支援事業(平成25年度)」につきまして、文科省の担当者、生涯学習政策局社会教育課
の●●様にお尋ねしましたところ、「この事業に関わる各自治体の取組内容は、各自治体に任
せてある」とのお話しでした。従いまして、冊子の内容・表現は、全て「あおもり被災地の
地域コミュニティ再生支援事業実行委員会」の決定によるものと理解しております。   

 冊子に見られる「男性に対する人権無視・人権軽視・誹謗表現」につきましては、具体的
に後述しますが、冊子の表紙に記された「男女共同参画の視点」は、とりもなおさず、「男女
共同参画社会基本法第三条(男女の人権の尊重)」に則った視点のはずで、ご存じのように、
「第三条」には、次のように記されています。

 【男女共同参画社会基本法第三条(男女の人権の尊重)】
   男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性
  別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保さ
  れることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。

 そして更に、平成25年5月に公開された「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指
針」には、上記「第三条」の精神を反映した、次のような文章が記されています。

 【男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(p.4)】
  4 男女の人権を尊重して、安心・安全を確保する
   避難生活において人権を尊重することは、女性にとっても、男性にとっても必要不可
  欠であり、どのような状況にあっても、一人ひとりの人間の尊厳、安全を守ることが重
  要である。                                  

 ですから、この冊子の作成に際して、「あおもり被災地の地域コミュニティ再生支援事業実
行委員会」は、上記のような「男女両方の人権の尊重」を、作成の基本精神として据えなけ
ればならなかったはずなのです。尊重されるべきは女性の人権だけではない。男性にも、尊
重されるべき人権があるのです。                          

 しかし実行委員会は、その精神と乖離した冊子を作りました。この冊子には、次に記すよ
うな問題点、「男性に対する人権無視・人権軽視・誹謗表現」が存在します。それは、「男女
共同参画社会基本法第三条」や「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の精神
からの乖離なのです。冊子の表紙には、「男女共同参画の視点を取り入れた」と謳いながら、
しかし実際の内容は、「男女共同参画の視点」になっていないのです。 

【問題点】

1.「女性専用ルーム」は設置されているが、「男性用の部屋」は、全く存在しない。

  ・・・ ひど過ぎる話だと思います。たとえば、ガレキの処理で心身共に疲弊して避難所に
  帰ってきた男性は、どこで、からだと心を休めればよいのでしょうか? 冊子の「女性
  専用ルーム」の説明文には、「お茶・お菓子・ドライヤー・鏡付きの一角」等を用意する
  とまで書き、チェック項目には「身だしなみセット・洗面器」から「アロマオイル」ま
  である。しかし、男性に対する配慮は何もないのです。疲弊した、からだと心を休める部
  屋さえもないのです。これでは、男性には人権などないに等しいではありませんか。こ
  のような、男性差別をしてよいのでしょうか?。

   心の問題について言えば、冊子の「女性専用ルーム」の説明文には、「(女性たちが)
  何気ないおしゃべりから、自分が抱えている悩みを打ち明け、少し楽になれる場にもな
  る」と記されています。しかし、「男女共同参画白書:平成24年全体版(内閣府)」の
  「第1−特−27図・28図・29図・31図」にも示されているように、被災地では、女性
  だけが悩んだのではない。男性も苦しんできたのです。それは例えば、白書「第1−特
  −27図」の「アルコール依存の男性での増加」、そして「第1−特−31図」の「自殺者
  に占める男性の割合」に、明確に示されているではありませんか。「男性たちが心通わせ
  る場」としても、「男性用の部屋」が必要なのです。

2.「女性専用物干し場」の必要性は説かれているが、「男性専用物干し場」の必要性は、
  全く指摘されていない。

   男性にも「専用物干し場」が必要な理由を、具体例と共に書きます。私は、現在の居
  住地に来て、22年になりますが、スラックスの下に身に着けている下着を、人に見える
  場所に干したことは、ただの一度もないのです。すべて部屋干しです。そういう男性も
  いるのです。「専用物干し場」は、性犯罪防止だけのために作られるものではない。改め
  て言うまでもなく、それ以前に、プライバシーの問題、羞恥に対する配慮の問題がある。
  そしてそれは、女性だけの問題ではないのです。感受性は人によって違います。男性で
  も羞恥心の強い人はいるのです。羞恥心は、性別で単純にカテゴライズできるものでは
  ないのです。

   羞恥は人間の尊厳に関わる感情です。男性の羞恥心を軽視することなく、「男性専用
  物干し場」の必要性も指摘してください。私は、個人的には、同性にも下着を見られた
  くはない。しかし、被災の現実を考えれば、そこまでの配慮は困難でしょう。ですから、
  「男女別の物干し場」を作るのです。「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針
  (内閣府)」の12ページにも、次のような文章が記されているではありませんか。

  【男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(p.12)】
     3 避難所 (1)避難所の開設 ・・・・・ ○ 避難所の開設当初から、授乳室や
    男女別のトイレ、物干し場、更衣室、休養スペースを設けること。

3.冊子 p.4 の「男女別更衣室」の説明文に、男性の尊厳を破壊する誹謗表現がある。

   下記の引用文の表現に、私は非常に強いショックを受けました。私は、女性の前で着
  替えをしたことなど、ただの一度もないのです。というより、着替えなどできるはずは
  ないのです。私は、あるスポ−ツクラブの男性更衣室に女性清掃員が入るのが嫌で、法
  務局の人権擁護課に人権救済の申し立てをして、合法的なたたかいを続けてきた人間で
  す。そういう感受性の男性がいるのです。しかし、下記の引用文は、そういう男性の存
  在を全く無視し、男性には、あたかも羞恥心がないかの如く表現しているではありませ
  んか。それは、私のような男性に対する、尊厳の破壊なのです。避難所に更衣室がなけ
  れば、私も「毛布の中で」着替えをします。それは、女性だけではないのです。そうい
  う感受性の、私のような男性が、人前で裸になど、なれるはずがないではありませんか。

   被災地の避難所に、下記の引用文のような着替えをした男性がいたのか否か、私は知
  りません。しかし、もしもいたとすれば、それは、常軌を逸した男性の批判されるべき
  行動でしょう。羞恥心を持つ健全な男性に、或いは良識ある普通の男性に、そんなこと
  ができるはずはないのです。引用文のような、常軌を逸した男性を、あたかも男性の代
  表であるかの如く表現するのは、絶対にやめてください。それは、男性に対する尊厳の
  破壊です。

   羞恥は人間の尊厳に関わる感情です。男性に対するプライバシーへの配慮は、羞恥心
  の強い男性を主役としてなされなければならないはずです。文章表現もそうです。常軌
  を逸した男性の批判されるべき行動だけを取り上げて、そうではない男性の尊厳を破壊
  する誹謗表現は、絶対にやめてください。

  【冊子 p.4「男女別更衣室」からの引用文】・・・(男性の尊厳を破壊する誹謗表現を含む)
     ・・・ 毛布の中や仮設トイレの中で着替えをしていた女性たちもたくさんいました。
    また、女性の前で、男性が裸になって着替えたりすることは、日常であればセクハ
    ラにつながり、それは非常時でも同じです。

4.「女性相談コ−ナ−(p.2)」や「DV被害女性支援ル−ム(p.4)」の必要性が記さ
 れている一方で、男性に対する相談・支援体制が全く存在しない。

   既に、上記1で記しましたたように、被災地で苦しんできたのは、女性だけではあり
  ません。男性も苦しんできたのです。それは、既述の通り、男性に多い自殺や、アルコ
  −ル依存の増加等に顕著に現れています。男性に対する相談体制の整備につきましては、
  【男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(内閣府)】には、次のように記さ
  れています。この現実もふまえ、男性に対する相談・支援体制も整備してください。

  【男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(p.19)】
     オ 相談窓口の周知(後半) ・・・・・ ○ 男性としての重圧や他人に弱音を吐くこ
    とを避ける傾向にある男性の精神面での孤立が課題となってくることから、男性に
    対する相談体制を整備するとともに、相談窓口の周知方法に工夫を行うこと。

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◆ 以上の認識をふまえ、冊子【「安心できる避難所づくり」訓練ヒント集】に見られる「男
 性差別」の是正のために、次の7点を要望します。

                    記

1.「男女共同参画社会基本法第三条(男女の人権の尊重)」、及び、「男女共同参画の視点か
 らの防災・復興の取組指針(内閣府)」の視点に立ち、冊子に見られる「男性に対する人権
 無視・人権軽視・誹謗表現」を是正すること。具体的内容は、以下の通り。

2.「女性専用ル−ム」だけではなく、「男性専用ル−ム」も冊子に付け加えること。また、
 「女性専用ル−ム」と同等の備品を、「男性専用ル−ム」にも用意すること。例えば、「鏡
 付きの一角」「ドライヤー」「身だしなみセット」「洗面器」「アロマオイル」等、冊子の
 「女性専用ル−ム」の説明文にある物品を、「男性専用ル−ム」にも用意すること。

3.「女性専用物干し場」だけではなく、「男性専用物干し場」も用意すること。

4.上記2・3の観点をふまえ、冊子 p.2の「レイアウト」、p.3の「準備物」等、関連部
 分を修正すること。

5.冊子 p.4 「男女別更衣室」の説明文に見られる「男性の尊厳を破壊する誹謗表現」を削
 除し、例えば次の文例のように、男女両方の人権を尊重した表現に修正すること。

【文例】・・・男性、女性それぞれの更衣室をつくることが大切です。避難所では、男女問わ
  ず、毛布の中や仮設トイレの中で着替えをしていた人たちがたくさんいました。男女の
  プライバシーを守るために、男女別更衣室をつくりましょう。

6.相談・支援体制は、女性だけではなく、男性についても整備すること。

7.冊子の全てを再度見直し、真に「男女共同参画の視点に立った冊子」、即ち、「男女両方
 の人権を尊重した冊子」を完成させること。
                               以上、強く要望します。